女性は更年期を境に生活習慣病のリスクが急上昇
女性ホルモンには、悪玉(LDL)コレステロールの増加を抑え、善玉(HDL)コレステロールを増やして動脈硬化を防ぐ働きがあります。しかし更年期になって女性ホルモンの分泌量が急減すると、動脈硬化や脂質異常、高血圧などの生活習慣病のリスクが上昇します。そうなる前に、しっかりとメタボ対策をとりましょう。
女性ホルモンが減少して内臓脂肪がたまりやすくなる
更年期とは、閉経をはさんだ前後10年を指します。日本女性の平均閉経年齢は約50歳といわれていますので、45~55歳ごろ、ということになります。更年期は女性の体にとって大きな転換期です。また、健康面からも大きな変化がみられます。男性と比べると生活習慣病になる女性の割合は少ないのですが、更年期を過ぎると、リスクが一気に急上昇するのです。その原因は女性ホルモンの分泌の減少です。代表的な女性ホルモンは、エストロゲンとプロゲステロンです。両方ともコレステロールから作られますし、男性ホルモンであるテストステロンもエストロゲンの合成過程で作られています。閉経期には、卵巣で作られていたエストロゲンやプロゲステロンは激減し、副腎皮質など卵巣以外の組織のものが主体になります。男性の場合は、性ホルモンは精巣や副腎皮質で作られています。
エストロゲンは妊娠・出産に備えるという働きのほかに、血管内皮から血管拡張因子である一酸化窒素の産生を高める、動脈硬化を起こす血管平滑筋細胞の増殖を抑える、LDLコレステロール(動脈硬化を進める悪玉コレステロール)を減らしHDLコレステロール(動脈硬化を抑える善玉コレステロール)を増やして血管を若々しく保つ重要な働きがあります。閉経まで高血圧や脂質異常が少ないのは、主に女性ホルモンが守ってくれているからなのです。血管と骨の健康は強い関係性をもっていますが、エストロゲンは骨の健康を維持する重要なホルモンでもあります。
ところが、女性ホルモンの分泌が減少し始める40歳代ごろから、様相が変わってきます。一般に、男性は40歳代をピークに肥満の割合が減るのに対し、女性は逆に増えてきます。
エストロゲンは、皮下脂肪を増やし、内臓脂肪を減らす働きがあります。更年期に入って女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌が減ると、お肌の張りは落ちるのに、食欲を促すホルモンが増える一方で、内臓脂肪が増え、メタボリックシンドローム(以下、メタボと略)を引き起こしやすくなります。
厚生労働省が平成26年3月に公表した「平成24年国民健康・栄養調査」に、「メタボリックシンドロームの状況」というデータがあります。そこでは、男女それぞれに年齢階級別にメタボになっている人の割合をはじき出しています。各年齢層での増え方は、グラフのように明らかに女性のほうが大きくなっています。
更年期を迎え、「おなかがポッコリしてきた」という自覚がある人は、今日からメタボ対策に着手することをおすすめします。

減らしやすい内臓脂肪は、運動と食事の2本だてで
メタボ対策の柱は、運動と食事の2本だて。内臓脂肪は減らしやすいのが特徴ですが、運動するだけ、または食事に気をつけるだけ、とどちらか一方だけでは、効果的に減らすのは難しいとされています。
ジムに通うことにはしたけれど、行き帰りは電車とバス、階段は使わずエスカレーター、ジム帰りは友人と喫茶店でケーキセット……では効果がありません。
対策のポイントをご紹介しますので、これらを参考に毎日の生活習慣を見直してください。
手軽な運動でよく歩くこと
2アップ、3ダウン。これは、階段があったら2階分は自分の足で上がる、3階分は下がる、ということです。歩数計は健康のバロメーター。自分で決めた目標値には必ず到達するように努力しましょう。自分を応援してくれる工夫のある歩数計やスマホのアプリを活用し、「自分を褒めてあげること」も効果的です。わざわざジムに行かなくても、掃除、洗濯、ショッピングなど体を動かす機会はいろいろあります。億劫がらず、こまめに動きましょう。
歩くときは、靴に気をつけましょう。関節を痛めると運動ができなくなってしまいます。怪我をしないこと、筋肉や関節を痛めない運動をすることは、とても大事です。
食事は食べ過ぎないこと
身長から100を引き、0.9を掛けると、おおよその標準体重になります。それに運動量を加味して20~30を掛けた数が推奨摂取エネルギー(カロリー)です。その55~60%を糖質としましょう。たんぱく質、オメガ3の脂質(主に魚です)、微量元素、ビタミンもバランスよくとりましょう。