一気に進むメタボリックドミノ! 倒れる前に止める
メタボリックシンドロームが進行すると、ドミノ倒しのように高血圧や糖代謝異常などが起こり、次いで動脈硬化、虚血性心疾患や脳血管障害、最終的には心不全や脳卒中、腎不全などの重大な病気が引き起こされます。ドミノの最初のコマは内臓脂肪型肥満です。これを倒さないよう、早い段階で生活習慣の改善をしましょう。
メタボはどんどん連鎖する
「メタボリックドミノ」という言葉を聞いたことはありませんか? 「メタボリックシンドローム(以下メタボ)」とドミノ倒しの「ドミノ」を合わせた造語です。メタボの進行とともに、さまざまな生活習慣病がドミノ倒しのように連鎖して起こり、最悪の場合には死につながる重大な病気を招いてしまう――このような状況をメタボリックドミノと呼びます。
重要なのは、1枚目のドミノを倒さないこと。もしも倒れてしまうと、本物のドミノ倒しと同じように、メタボリックドミノは一気に進みます。しかし、早い段階で止められれば最悪の事態を避けることができます。できるだけ早く手を打つことが、連鎖を防ぐカギとなります。
内臓脂肪の蓄積から始まるドミノ倒し
ドミノ最初の1枚
メタボリックドミノの最初1枚は、内臓の周りに脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」です。脂肪細胞には余分なエネルギーを脂肪として溜めこむ貯蔵庫の役割のほかに、さまざまな働きをするホルモンを分泌する働きがあります。肥満があると、一つひとつの脂肪細胞は大きくなります。
肥大していない脂肪細胞からは善玉ホルモンが分泌され、動脈硬化の進行を抑える、インスリンの働きをよくして糖尿病を予防する、などの働きをします。
ところが、脂肪がどんどんたまって脂肪細胞の肥大化が進むと、善玉ホルモンの分泌が減って、代わりに悪玉ホルモンが盛んに分泌されるようになってきます。悪玉ホルモンは、血圧を上げる、インスリンの働きを悪くする、血の塊(血栓)を作りやすくする、など体に悪い影響を及ぼします。
ドミノ2列目
悪玉ホルモンの分泌がもたらすものは、病気の1歩手前の「血圧高め」「血糖値高め」、「脂質異常」という状態。内臓脂肪型肥満という1枚目のコマが倒れることで、悪影響の連鎖が起こり始めます。内臓脂肪型肥満に加え、血圧、血糖、脂質の3項目のうち2つ以上の項目で異常があれば、メタボリックシンドロームと診断されます。
ドミノ中列域
この時点では血圧や血糖、脂質はそれほど高くはなく、正常値と異常値の中間的な値です。しかし、それぞれの異変がわずかであっても、重なり合うことで動脈硬化の進行が速まるとともに、高血圧症や糖尿病へも移行しやすいことがわかっています。最初に倒れたドミノからの連鎖で倒れる数が広がり、病気を発症するリスクがどんどん高まっていきます。
ドミノ最終列
メタボリックドミノは、進めば進むほど深刻な病気が出てきます。中列域で引き起こされた病気が進行すると、糖尿病や慢性腎臓病、心筋梗塞、脳血管障害などが起こります。そして最終的には、心不全、脳卒中、認知症、失明、腎不全などの命にかかわるような重大な状態を招きます。
倒れるドミノを止めるには、どうすればいい?
最初のドミノを倒さないためには、どうしたらいいでしょうか。
まずは、生活習慣の見直しから始めましょう。内臓脂肪型肥満は、悪い生活習慣から起こります。脂肪や糖質の多い食事の食べ過ぎ、ビタミンやミネラルが少ない食事、お酒の飲み過ぎなどの偏った食生活、運動不足、不規則な睡眠、喫煙などの習慣を改めることが必要です。女性の場合は、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの働きが低下する50代前後にメタボリックシンドロームが急激に進むことがありますので、「今までは元気」と思って過信しないようにしましょう。
ドミノが倒れ始めても、倒れたコマが少なければ少ないほど止めやすくなります。特定健診などでメタボと診断された人も、早い段階で生活習慣の改善や必要に応じた薬物療法などの治療に取り組めば、メタボリックドミノの進行を止めやすいことがわかっています。
一気に進むメタボリックドミノ、これを止められるかどうかは、あなた次第なのです。