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朝食を抜くとかえって太りやすい、ってホント?

朝食を抜くとかえって太りやすい、ってホント?

体内時計が乱れ、飢餓に備えて脂肪をため込もうとする

体のリズムに則して食事をしているか、ということも肥満に関係してくることがわかっています。

私たちの体の活動や休息のリズムは、地球の自転と同調しています。そのリズムを刻む体内時計は、脳にある時計遺伝子がコントロールしています。それが刻む1日のリズムは25時間なのですが、朝起きて光の情報を目から受けることで、地球の自転リズムと同じ24時間にリセットされます。

さらに時計遺伝子は、脳だけでなく胃腸や肝臓、腎臓、肺、筋肉など全身の末梢部分にも存在していることがわかってきました。こちらの時計遺伝子をリセットするのは、朝の食事です。

脳と末梢にあるこれら2種類の時計遺伝子が協調して私たちの体のリズムを作っていて、協調が乱れると肥満や体調不良が起こりやすくなります。朝起きたら太陽の光を浴びる。そして朝食をとる――この2つが体のリズムを整えるのに欠かせません。

朝食をとらないと、脳にある時計遺伝子は飢餓の危機を感じ、非常事態に備えて脂肪をため込む方向に作用します。これは原始時代からの長い歴史のなかで、常に飢餓に悩まされ続けてきた人間のDNAといわれます。

飽食の現代にあって飢餓に備える本能を刺激してしまうとは、「朝食抜き」は何とも皮肉なライフスタイルではないでしょうか。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。