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運動は20~30分以上続けてやらないとメタボ予防効果はない、ってホント?

内臓脂肪は溜まりやすく減らしにくい、ってホント?

ウソです。
確かにこれまで、メタボの予防・改善のための運動は1回に20~30分以上行うのが望ましい、といわれてきました。まとまった時間が取れるならそれに越したことはないかもしれませんが、それが無理なら1回10分程度に小分けにし、1日に2、3回行うことでもよい、と最近は考えられています。「時間がない」と諦める前に、ちょっとの時間でも体を積極的に動かしましょう。

運動のし始めでの主なエネルギー源は糖質

メタボ対策には、運動をすることが強く提唱されています。メタボの元凶といわれる内臓脂肪は、運動によって燃やしやすい(消費しやすい)ことがわかっているからです。

そのために効果的とされているのは、呼吸によって酸素を取り込みながら比較的長い時間体を動かし続ける、有酸素運動です。ウオーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などがその代表的な種目。このような持久力を高める運動では、初めはエネルギー源の60%は糖質、40%は脂質が使われるのですが、20分を過ぎるころにはその比率は半々になり、60分くらいになると糖質が40%、脂質が60%と逆転する*ことが海外の研究でわかっています。このことから、体脂肪を減らす運動をするなら1回20分以上が目安とされるようになったようです。

*Fox, E.L. (1982) Sports Physiology. Saunders Company.

20分未満でも体内の脂肪は燃え始めている

それなら20分未満の運動では効果がないのかというと、そんなことはありません。実際、上記の研究でも、運動のし始めではエネルギー源の40%は脂質が使われるとしています。20分というのは脂質が効率よく燃焼するためにかかる時間であり、実際にはその前からも脂質はエネルギー源として少しずつ使われているわけです。

つまり、20~30分連続して行えないのなら、5分とか10分という、こま切れの運動を1日に何回かに分けて積み上げていくのでも、体脂肪を減らす効果はあると考えてよいのです。

森谷 敏夫 先生

監修者 森谷 敏夫 先生 (京都産業大学 共通教育推進機構教授)
1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授、京都大学教養部助教授(准教授)、カロリンスカ医学研究所国際研究員(スウェーデン政府給付留学)、米国モンタナ大学生命科学部客員教授などを経て、1992年、京都大学大学院人間・環境学研究科助教授(准教授)、2000年から同科教授。2016年から京都大学名誉教授および現職。専門は応用生理学とスポーツ医学。国際電気生理運動学会会長、アメリカスポーツ医学会評議員、日本運動生理学会理事ほか、複数の要職兼務。主な著書は『メタボにならない脳のつくり方』『人は必ず太る しかし 必ずやせられる』ほか。