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お酒を飲まない人も要注意の「脂肪肝」。肝硬変や肝がんの危険も

お酒を飲まない人も要注意の「脂肪肝」。肝硬変や肝がんの危険も

 肝臓に過剰な脂肪が溜まっている状態を「脂肪肝」といいます。定期健診や人間ドックなどで多く見つかる肝機能異常のほとんどが脂肪肝です。これまで主な原因とされてきた飲酒に代わり、最近は食べ過ぎなどによる脂肪肝が増えています。自覚症状がないからと放置すると、肝硬変から肝がんに進行する危険があります。

本来は脂肪が溜まらないはずの肝臓に、有り余った脂肪が溜まる

脂肪肝は、肝臓に脂肪が溜まり、それが肝臓全体の30%以上を占めている状態です。皮下脂肪や内臓脂肪に収容しきれない脂肪が、本来なら脂肪が溜まらない臓器に溜まってしまう、「異所性(いしょせい)脂肪」(第3の脂肪とも呼ばれます。詳しくは「やせている人も生活習慣病に! 「第3の脂肪」にご用心」参照)のうちの一つです。

脂肪肝として、一般的に知られているのはアルコールの摂り過ぎによる「アルコール性脂肪肝」です。しかし最近は、アルコールが原因ではない「非アルコール性脂肪肝(NAFLD、ナッフルディー)」が増えています。

NAFLDの原因は、高脂肪・高エネルギーな飲食物の摂り過ぎや運動不足などがもたらす肥満、2型糖尿病、脂質異常症など。それらがあると、全身でインスリンの働きが悪くなり、肝臓に脂肪が溜まりやすくなるのです。

肥満の人はもちろん、隠れ肥満の人も要注意。肝炎から肝硬変に進むおそれも

日本では、NAFLDは40歳代以上の男性に多く、年齢層別に患者さんの数を調べた調査*1では、男性では40歳代~60歳代のいずれも約4割の人がNAFLDを発症していました。女性は高齢層に多く、60歳代の3割超、50歳代および70歳代以上の約2割という結果に。肥満の人やメタボリックシンドロームの人が増えるにつれて、NAFLDの人も増えています。

ただし、BMI(体格指数、体重kg÷身長m÷身長m)が25未満で肥満とはされない人でも、内臓脂肪が多く溜まっていればNAFLDになりやすいことがわかっています。*2 肥満でなくても血糖値や血圧、中性脂肪が高い「隠れ肥満」の人は要注意です。 また、NAFLDは1~2割の人が重症化して非アルコール性脂肪肝炎(NASH、ナッシュ)になり、さらにそこから肝硬変に進行したり肝がんを発症したりすることもあるため*3、放置するのは禁物です。

*1 Eguchi Y, Hyogo H, Ono M, et al: Prevalence and associated metabolic factors of nonalcoholic fatty liver disease in the general population from 2009 to 2010 in Japan: a multicenter large retrospective study. J Gastroenterol 47; 586-595: 2012

*2 小川佳宏編『異所性脂肪《メタボリックシンドロームの新常識》 第2版』日本医事新報社、2014

*3 日本消化器病学会編『患者さんとご家族のためのNAFLD/NASHガイド』2016

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。