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運動不足の子どもは将来メタボ・ロコモに!

運動不足の子どもは将来メタボ・ロコモに!

 メタボ(メタボリックシンドローム、内臓脂肪型肥満)は主に中高年を脅かす病気ですが、実は子どもも無縁ではありません。また、運動不足の子どもは、ロコモ(ロコモティブシンドローム=筋肉や関節などの運動器症候群)の恐れがあり、生活習慣病だけでなく、要介護状態も招きやすくなります。親子一緒に、正しい食生活や運動習慣を身につけましょう。

小学生の1~2%がすでにメタボに

子どもにとってもメタボの入り口は肥満です。1970年代以降、子どもの肥満が急増し、その割合は1割を超えているといわれています。肥満をベースに動脈硬化が進行するというメタボへの道筋は子どもも同じで、「小児期(6~15歳)のメタボリックシンドロームの診断基準」も作られています。この基準に照らすと、小学生の1~2%にすでにメタボが出現しているそうです。

子どもの肥満の原因はほとんどが、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回っている、という単純な図式です。栄養バランスの悪い食事、おやつや甘い清涼飲料水などのとり過ぎ、その一方で体を動かすことが少なくなった運動不足。この積み重ねが肥満をもたらしているのです。

大人になってもメタボになりやすい。運動不足でロコモの危険も

子どものときの肥満は、大人になってからも肥満につながりやすいといわれます。特に思春期の肥満は元に戻すことが大変難しいとされています。

子どもの体力低下とメタボの関係も問題視されており、小児期(7~10歳)に身体活動量が少なく、体力の指標となる最大酸素摂取量が低い子どもは、思春期(14~17歳)において体力が正常の子どもより5~6倍もメタボになりやすい*1と報告されています。このことは、大人になってからもメタボにつながりやすいと考えられます。

また、現代っ子には、メタボと並んでロコモへの危惧も高まっています。1985年前後をピークに子どもの体力・運動能力が著しく低下していることが指摘され、2016年から学校定期健診に運動器検診の項目が追加されました。そのモデル事業として、埼玉県は6年間にわたり就学時と小学校5年生、そして中学生に運動器検診を行ってきましたが、約4割の子どもに何らかの運動器機能不全が見られたそうです。

以下の4つの基本動作のうち1つでも当てはまれば、「子どもロコモ」の疑いがあるとされているので、チェックしてみましょう。

【子どもロコモチェック】(「健康な体作りのための子ども処方箋」*2より作成)
(1) 片脚立ちがふらつかずに5秒以上できない
(2)しゃがみ込めない
 ・途中で止まる ・かかとが上がる ・うしろに転ぶ
(3)肩が垂直に上がらない
(4) 体の前屈で、指が床につかない

ロコモを抱えた子どもたちが、成人するまでに十分な体力・運動能力を獲得できなければ、やがては生活習慣病を発症し、高齢になって寝たきりになる可能性が増えると危ぶまれています。

*1 McMurray, R. G., Bangdiwala, S. I., Harrell, J. S., and Amorim, L. D. (2008) Adolescents with metabolic syndrome have a history of low aerobic fitness and physical activity levels. Dynamic Medicine 7: 5.

*2 埼玉県医師会学校医会,運動器検診委員会, 全国ストップ・ザ・ロコモ協議会「健康な体作りのための子ども処方箋」

森谷 敏夫 先生

監修者 森谷 敏夫 先生 (京都産業大学現代社会学部 健康スポーツ学科 教授)
1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授、京都大学教養部助教授(准教授)、カロリンスカ医学研究所国際研究員(スウェーデン政府給付留学)、米国モンタナ大学生命科学部客員教授などを経て、1992年、京都大学大学院人間・環境学研究科助教授(准教授)、2000年から同科教授。2016年から京都大学名誉教授および共通教育推進機構教授、2017年から現職。専門は応用生理学とスポーツ医学。国際電気生理運動学会会長、アメリカスポーツ医学会評議員、日本運動生理学会理事ほか、複数の要職兼務。主な著書は『メタボにならない脳のつくり方』『人は必ず太る しかし 必ずやせられる』ほか。