なりたい自分のために、自分の健康を“デザイン”しよう
世界保健機構(WHO)では、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます」と定義しています。人生100年になりそうな時代において、この3つが完全に良好であることは難しいでしょう。客観的には完全でなくても、主観的に「満足」「幸福」と感じられることが大切になってきます。各自の性・年齢、そして人生の目的によって、予防したい病気や障害は異なります。今回改訂された特定健診プログラムでは、「年齢層を考慮した健診・保健指導」の必要性が明記されました。今年度の当コーナーでは、性・年齢層ごとに疾患や障害を予防するとともに、健康を“デザイン”することを考えていきましょう。
5年ぶりに改訂された特定健診プログラム
2008年度にスタートした特定健診・特定保健指導は今年度(2018年度)、第3期に入りました。特定健診は40歳以上74歳以下の被保険者・被扶養者を対象としたもので、内容は高血圧症、脂質異常症、糖尿病その他の「内臓脂肪の蓄積に起因する」生活習慣病に関するものとされています。特定健診を受診し保健指導を受けた人は、3年後にメタボと診断される割合が31%減少し、腹部肥満も33%改善したなど、特定健診・特定保健指導の実施効果は明らかとされています。
今回5年ぶりに改訂された特定健診プログラム(厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム【平成30年度版】」)では、必要があれば心電図検査、眼底検査、貧血検査(赤血球数、血色素量、ヘマトクリット値)を加えることになりました。また、メタボとかかわりの深いCKD(慢性腎臓病)対策として、血圧または血糖値が保健指導判定値以上で、医師が必要と認める人に対し、血清クレアチニン検査が追加されることになりました。
性・年齢別体組成とメタボリックシンドロームの関係は?
肥満の指標としては、前回同様に「腹囲 男性85㎝以上、女性90㎝以上、又はBMI≧25㎏/㎡」が採用されましたが、実は、日本のメタボの定義および基準は諸外国と異なっており、さらに特定健診においては、独自の基準が用いられています。
韓国で行われた男性95人女性185人(30~80歳、高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満の治療を受けていない)を対象にした研究では、男性においては、CT計測による内臓脂肪は、BMI・腹囲とよい相関を示しましたが、女性では閉経後ではBMI・腹囲とよい相関を示したものの、閉経前では相関係数は低かったと報告されています。
また、肥満指数を入れないメタボリックシンドロームの因子(血圧、糖代謝、脂質代謝)と内臓脂肪、腹囲の関係は、男性と閉経後の女性では認められましたが、閉経前の女性では内臓脂肪のみ関連が認められました。
肥満の測定方法には、BMIや腹囲だけでなく、CTによるへその位置での内臓脂肪・皮下脂肪の計測、インピーダンス法による内臓脂肪・皮下脂肪の計測、ウエスト/ヒップ比など、さまざまなものがあります。さらに最近では、部位ごとの水分量、皮下脂肪・内臓脂肪、筋肉量、骨量なども計測できるようになってきました。
筋肉もその量および強さが死亡率と関係する可能性が示唆されていますし、骨も体を支えるという機能のほかに、血管や血液、免疫、腎臓などあらゆる臓器やシステムにかかわっていることがわかってきています。
理想的な体組成を得るための運動、食事、睡眠に関しても新たな研究成果が次々に出されており、ウエアブル端末を用いてセルフコントロールする動きもみられています。