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なりたい自分のために、自分の健康を“デザイン”しよう

なりたい自分のために、自分の健康を“デザイン”しよう

日本人は、やせすぎでも死亡リスクが上昇

日本の7つの研究データをあわせたBMIと死因の関係についての解析結果で、心疾患・脳血管疾患による死亡を折れ線グラフで見ると、男女ともU型です。最も低いのはBMI23~25付近で、それ以下でも以上でもリスクは上がります。がんは男性では、逆J型を描き、むしろ体重が低いほうがリスクは高くなっていますが、女性ではBMI30以上でリスクの上昇がみられます。その他の疾患では、男女とも逆J型で「やせ」のリスクが高いことがわかります。

心・脳血管疾患死亡とBMIがUカーブなのは、南アジアや東アジアのデータでもみられ、欧米のJカーブであるのとは異なっています。

やせすぎは要介護リスクも高めます。前述の健診プログラムでは、65~74歳の人たちに対する健診・保健指導において、重点をメタボ対策から、体重や筋肉量の減少、低栄養などによるロコモティブシンドローム(ロコモ)やフレイルなどの予防・改善を目指す対策に転換していくことも必要、と述べられています。

年代によって病気の予防戦略は異なる

特定健康診断の対象年齢である、40~74歳での死因の第一位はがんです(厚生労働省「平成27年人口動態統計月報年計(概数)の概況」による)。特に女性は子宮頸がん、乳がんがあり、30代からリスクが高いのが特徴です。

心・脳血管疾患は、男性のほうが女性よりもリスクが高く、男性では30代から加齢とともに徐々に上昇します。

女性は閉経までは心・脳血管疾患リスクは低いのですが、閉経後に急速にリスクが高まります。女性はそもそも、妊娠・出産・不妊など「リプロダクティブ・ヘルス」(性と生殖に関する健康)に伴うリスクがあります。若年のやせや貧血などの栄養障害は次世代にも影響を与えます。日本学術会議の提言では、生活習慣病の基盤となる生活習慣の乱れは幼小児期に始まり、代謝の変化に関しては母親の胎内にいるときにその芽が生まれているとわかってきていることから、母親の生活習慣や子どもの出生直後からの生育環境も考慮する必要があるとされています。

10~30代では自殺や不慮の事故が多く、男性は女性よりもリスクが高いです。また、特に青年期には生活習慣が乱れがちですから、喫煙、飲酒、運動不足など好ましくない生活習慣が定着する大学や就職直後からの対策が望まれます。

高齢になると、がん・心血管疾患・骨折・肺炎・認知症の有無がかかわってきて死因が複合的になってくるため、予防戦略は個別的、複合的になります。

どのような体型を手に入れ、生活習慣を身につけるのか、自分の健康をデザインする時代がやってきました。今年度当コーナーを参考に、どの年代の人も、そして太りぎみの人もやせぎみの人も、自分に必要な対策に取り組んでいきましょう。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。