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太り過ぎもやせ過ぎもNG! 適正体重を維持しよう

太り過ぎもやせ過ぎもNG! 適正体重を維持しよう

 肥満はさまざまな生活習慣病の原因になり、メタボ(メタボリックシンドローム、内臓脂肪症候群)にもつながります。一方、やせ過ぎでもがんのリスクを高めたり、高齢期では心身の機能が低下するフレイルに陥る危険や、女性では不妊や動脈硬化の危険が高まります。エネルギーや栄養素のバランスを取ることは、心血管、がん、メンタルヘルス、筋骨格はもとより、脳機能、免疫、生殖機能、消化器、呼吸器を健康に保つためにも重要です。太り過ぎにもやせ過ぎにも注意して、適正体重を保つことが大切です。

働き盛り男性に目立つ肥満

肥満度をはかるモノサシとして使われているBMI(体格指数:体重kg÷身長m÷身長mで計算)では、25以上は「肥満」、18.5未満は「やせ」と判定されます。「日本人の食事摂取基準2015」では、18歳以上の年齢層ごとに「目標とするBMI」が以下のように定められています。*1

年齢 目標とするBMI
18~49歳 18.5-24.9
50~69歳 20.0-24.9
70歳以上 21.5-24.9

しかし、「健康日本21(第二次)」中間報告によると、肥満者の割合に変化はないものの、40~50歳代男性で肥満者の割合が30%を超える状態が続いています。*2

太り過ぎはさまざまな生活習慣病の温床となり、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、脂質異常症、がんなどのリスクを高めることがわかっています。さらに、高齢に近づくと腰や膝に負担がかかり、変形性膝関節症や腰痛症など、慢性的な症状の原因にもなります。

若い女性、高齢者の低栄養が増加

一方、やせ過ぎにも問題は少なくありません。若年者のやせ願望も強く、若年者の低栄養は、生殖機能、メンタルヘルス、将来の筋骨格系疾患や心血管疾患や胎児の健康にも重要な影響を及ぼすと考えられます。がんのリスクがあることは太り過ぎと同様ですが、若い女性では卵巣機能の低下や低出生体重児を出産するリスクになります。また、高齢期には、要介護の原因になるロコモ(ロコモティブシンドローム、運動器症候群)やフレイル(虚弱)になりやすいことが懸念されています。前述の「健康日本21(第二次)」中間報告では、低出生体重児(2,500g未満)や高齢者での低栄養傾向(BMI20以下)が増加していることに警鐘が鳴らされています。*2

太り過ぎでもやせ過ぎでも、心身に障害がなく暮らせる期間(無障害生存期間)が比較対照群より1.3~1.6年短いという報告もあり、*3どちらでもない適正体重を維持することの重要性が示唆されています。

もちろん、遺伝的な問題や体質、疾患などの影響で適正体重の維持が難しい人は、このかぎりではありません。かかりつけ医と相談のうえ、ご自分に合った体重維持を心がけてください。

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。