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十分な睡眠をとれているか、確認しよう

十分な睡眠をとれているか、確認しよう

 秋の訪れは寝心地の良さを運んできますが、日常的な不眠や睡眠不足に悩まされている人は少なくないでしょう。それらが慢性化すると、家事や仕事でミスや事故が起こりやすくなり、うつ病や生活習慣病、認知症などのリスクも高まります。睡眠に不安があったら、すぐに改善が必要です。

日本では約2~3割の成人が睡眠に問題を抱えている

厚生労働省「平成29年国民健康・栄養調査」(2017年)によると、日本の成人のうち、「ここ1カ月間、睡眠で休養が充分とれていない」と答えている人は20.2%にのぼり、2009年以降増加傾向にあります。

また、「床に就いてもなかなか眠れない」「夜中に目が覚めてしまうことがよくある」「もっと眠りたいのに朝早くに目が覚めてしまう」といった何らかの不眠症状を経験している日本人は、成人の5人に一人という調査結果もあります。

睡眠は脳と体を休ませるために不可欠であり、ストレス軽減や免疫力向上の働きがあるともいわれます。このため、満足な睡眠がとれない状態が続くと、日中に眠気や倦怠感を感じ、家事や仕事でミスや事故を起こす危険が高まったり、不安やイライラ、気分の落ち込みなどもたびたび起こるようになります。

生活習慣病やうつ病などのリスクにつながる不眠症。原因となる疾患があることも

そのような状態が3カ月以上も続く「慢性不眠症」になると、十分に睡眠がとれている人に比べ、うつ病になるリスクは2倍以上、糖尿病は1.5~2倍も高くなることが、さまざまな研究によって報告されています。さらに、肥満、高血圧、循環器疾患、メタボリックシンドローム、認知症などにもなりやすいことがわかっています。

一方で、心身の病気が不眠をもたらすこともあり、高血圧、心臓病、うつ病、不安障害、アルコール依存症などが挙げられます。睡眠時無呼吸症候群も睡眠不足を誘発する病気として重要です。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まる病気で、顔の形や肥満により、のどの空気の通り道が狭くなることが原因です。睡眠時無呼吸症候群の患者さんは生活習慣病を合併していることが多く、さらに睡眠時無呼吸症候群によって高血圧や糖尿病、脳卒中、虚血性心疾患などのリスクも上がるので、注意が必要です。

 

監修者 兼板 佳孝 先生 (日本大学医学部社会医学系公衆衛生学分野 教授)
1998年日本大学大学院医学研究科医学研究科内科学専攻修了、2003年日本大学医学部 助手、2006年同専任講師、2008年准教授、2012年大分大学医学部教授を経て現職。社会医学系専門医・指導医、日本公衆衛生学会認定専門家、総合内科専門医、日本医師会認定産業医。