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全身の健康にかかわる歯周病。毎日のケアと、定期的なチェックが重要

全身の健康にかかわる歯周病。毎日のケアと、定期的なチェックが重要

 わが国では、成人の約8割が歯周病になっているといわれます。歯周病は全身の病気と深いかかわりがあり、健康寿命の延伸にも影響します。また、なんらかの理由で歯を失ったままにしていたり、歯・口腔のトラブルを放置していると、バランスのよい食事がとれなくなり生活習慣病のリスクが増えることもわかっています。日頃の適切なケアと、定期的な歯科検診が重要です。

歯の喪失の主な原因となる歯周病は、糖尿病と互いに影響し合っている

食事でよく噛めないと、生活習慣病のリスクが高まります。嚙みごたえのある野菜などの摂取が少なくなり、一方で脂質やエネルギーの摂取量が増えることから、肥満につながりやすいためです。そのため、特定健康診査では2018年度から、問診項目に「食事を噛んで食べるときの状態はどれにあてはまりますか」という質問が加わりました。

食物をよく噛めなくなる原因としては、歯周病やむし歯、歯の喪失などが指摘されています。また、歯周病は、むし歯と並んで歯の喪失の主な原因にもなっています(8020推進財団「第2回永久歯の抜歯原因調査報告書(抜粋)」、2018年による)。v

さらに、歯周病があると全身の病気に影響を与えることもわかってきました。特に、歯周病が重症化すると、炎症性サイトカインという物質の産生が促され、それにより血糖をコントロールするインスリンの働きが妨げられて、糖尿病が悪化します。また、糖尿病が悪化すると歯周病菌に感染しやすくなってしまうという悪循環が起こるのです。加えて、歯周病が進行すると食物を噛みにくくなり、硬い食品を避けて砂糖や油脂が豊富な軟らかい食品を好むようになり、糖尿病の食事療法を実践するうえでの障害となります。

逆に、歯周病を治療することで炎症性サイトカインが抑えられ、糖尿病のコントロール状態を表す数値「ヘモグロビンA1c」も改善されることがわかっています。

歯に付着する歯垢は細菌の塊。きちんと取り除かないと、さまざまな病気のリスクに

歯周病は、口腔細菌のなかに存在する歯周病菌によって起こります。歯周病になると歯周ポケットの内側が出血しやすくなり、この歯周病菌が血液に混じって全身に運ばれることから、動脈硬化、心臓病、脳梗塞、認知症、がん、早産・低体重児出産、骨粗しょう症、誤嚥性(ごえんせい)肺炎など、さまざま病気のリスクが高まります。

歯周病を予防するには、適切な毎食後の歯みがきで、歯周病菌の塊である歯垢(プラーク)をきちんと取り除くことが大切です。歯垢は、歯の表面や歯と歯の間などに付着する白っぽいネバネバしたもので、歯と歯肉の境目などに溜まると数日のうちに歯肉に炎症が起こり、歯肉炎となります。

歯肉炎を放置しておくと歯と歯肉の間に歯周ポケットと呼ばれる深い溝ができ、そこで歯石が溜まりやすくなります。歯石は歯垢に唾液や血液成分が混じって石灰化したもので、文字通り石のように硬い組織で、歯みがき程度では取り除くことができません。歯石の表面はザラザラしているので、そこに歯垢が付着して歯周病が進行し、やがて歯を支えている歯槽骨が壊れ、歯がグラグラと動揺するようになり、最終的には歯の喪失に至ってしまいます。

安藤 雄一 先生

監修者 安藤 雄一 先生 (国立保健医療科学院 生涯健康研究部 主任研究官)
1983年新潟大学歯学部卒業。新潟大学歯学部予防歯科学講座医員、同助手、新潟大学歯学部附属病院講師、国立感染症研究所口腔科学部歯周病室長、国立保健医療科学院口腔保健部口腔保健情報室長、同生涯健康研究部上席主任研究官、同統括研究官を経て、2019年より現職。