日本人はまだ食塩を摂りすぎている。減塩に取り組もう
食塩の摂りすぎが、高血圧をはじめとして健康上のリスクを高めることはよく知られています。にもかかわらず、日本人の食塩摂取量は基準とされる量を大きく上回っています。高血圧の人もそうでない人も減塩に努め、健康を損ないそうな生活習慣がほかにもあるなら、それもぜひ改善しましょう。
食塩摂取量はやや改善も目標にはまだ遠い
厚生労働省「平成29年国民健康・栄養調査」では、日本人(20歳以上)の食塩摂取量は1日平均9.9gで、男女別では男性10.8g、女性9.1gとなっています。10年前と比べれば男女とも1.2g減少しています。
しかし、2020年度から使用される「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の食塩摂取目標量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満です。現状の2015年版より、男女とも0.5gずつ厳しくなっており、日本人には一層の減塩が必要です。
食塩の過剰摂取が招く健康上のリスクの一番は高血圧でしょう。日本人の高血圧の多くは、食塩の過剰摂取、肥満、飲酒、運動不足、ストレスなどの生活習慣が原因で起こる本態性高血圧で、なかでも食塩の摂りすぎの影響が大きくなっています。
高血圧が進むと、脳卒中や心臓病、慢性腎臓病(CKD)などを引き起こし、命にもかかわりかねません。また、食塩摂取量が胃がんや食道がんのリスクを高めることもわかっています。
厳しくなった血圧区分。「高値血圧」なら要注意
若いあなた、高血圧は自分には関係ないから大丈夫、と思っていませんか? しかし、世界32カ国から選んだ52地域に住む約1万人を対象にしたINTERSALT研究では、食塩摂取量が1日あたり1g増えると、血圧が1年間に0.58mmHg上昇、つまり10年間でおよそ6mmHgも上昇することがわかっています*。
特に女性は若年時には低血圧気味であるため、「自分は血圧大丈夫」と思っている女性も多いかもしれません。しかし、閉経後は急激に高血圧になってくるので注意が必要です。「平成29年国民健康・栄養調査」と「平成29年人口動態統計」のデータから高血圧人口を推計してみると、高齢者には女性比率が高いので、なんと70歳以上では1038.7万人もの女性が高血圧であることがわかり、油断できません。
また、今年(2019年)4月に改訂された日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」では、これまでの国内外の研究結果を踏まえ、以前の「正常血圧」(拡張期血圧120-129かつ収縮期血圧80mmHg未満)が「正常高値血圧」に、「正常高値血圧」(130-139かつ/または80-89mmHg)が「高値血圧」にと、診断基準がより厳しくなりました。なお、これはすべて診察室で測った場合で、家庭血圧の基準はさらに5mmHg低い基準となっています。
「血圧は年1回の健康診断でしか測らない」という人は、家庭でも測定することをおすすめします。家庭に血圧計がない場合、自治体の保健センターや調剤薬局、ドラッグストアなど無料で測れる場所が増えているので、見かけたらぜひ測ってみましょう。
*Intersalt Cooperative Research Group. Intersalt: an international study of electrolyte excretion and blood pressure. Results for 24 hour urinary sodium and potassium excretion. BMJ. 1988; 297: 319 28.