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特定保健指導って、どうして受けたほうがいいの?

特定保健指導って、どうして受けたほうがいいの?

【こたえ】
動脈硬化を自覚症状がないままに進行させ、心臓病や脳卒中などの深刻な病気になる危険を高めることが、メタボリックシンドローム(メタボ)の問題点です。内臓脂肪型肥満に高血圧や脂質異常、高血糖などのリスクが重なると、動脈硬化が進みやすくなります。しかし、太っておらずメタボと判定されない人でも、高血圧や脂質異常、高血糖があると、同様に危険であることもわかっています。体型にかかわらず、不適切な生活習慣を改めることが大切です。

メタボリックシンドロームって、どういうこと?

メタボリックシンドローム(MetS)の定義は国際的にみると複数のものがあり、次のようになっています。

メタボリックシンドローム(MetS)の定義
WHO(世界保健機関)
  • ①(必須)糖代謝異常とインスリン抵抗性
  • + ②~⑥の2つ以上
  • ②ウエスト・ヒップ比 女性>0.85、男性>0.90
    またはBMI>30kg/m2
  • ③トリグリセライド(TG)≧150(mg/dl)
  • ④HDLコレステロール(HDL-C)女性<39(mg/dl)、男性<35(mg/dl) 
  • ⑤血圧≧140/90(mmHg)
  • ⑥尿中アルブミン≧20(μg/分)
    またはアルブミン/クレアチニン比≧30 (mg/g)
米国コレステロール教育プログラム高脂血症治療ガイドライン 以下のうち3項目以上
  • ①ウエスト周囲径 女性>88、男性>102(cm)
  • ②TG≧150(mg/dl)
  • ③HDL-C 女性<50(mg/dl)、男性<40(mg/dl)
  • ④血圧≧130/85(mmHg)
  • ⑤空腹時血糖≧110 (mg/dl)
国際糖尿病連合(IDF)
  • ①(必須)中心性肥満
    ウエスト周囲長 アジア系は女性≧80、男性≧90(cm)
  • +②~⑤のうち2つ以上
  • ②TG≧150(mg/dl)または薬物治療
  • ③HDL-C 女性<50、男性<40(mg/dl)または薬物治療
  • ④血圧130/85(mmHg)または治療中
  • ⑤空腹時血糖≧100(mg/dl)または2型糖尿病
日本(メタボリックシンドローム診断基準検討委員会)
  • ①(必須)中心性肥満
    ウエスト周囲長 女性≧90、男性≧85(cm)
    または内臓脂肪面積≧100m2
  • +②~⑤のうち2つ以上
  • ②TG≧15(mg/dl)または薬物治療
    または/かつHDL-C<40(mg/dl)または薬物治療
  • ③血圧≧130/85(mmHg)または薬物治療
  • ④空腹時血糖≧110(mg/dl)または薬物治療

WHO(世界保健機構)と米国コレステロール教育プログラム高脂血症治療ガイドラインでは、内臓脂肪は必ずしも必須となっていません。一方、国際糖尿病連合(IDF)でと日本の検討委員会での定義は中心性肥満が必須となっています。

日本のウエスト周囲長は、CTによる内臓脂肪面積≧100m2から割り出されました。他の基準では、BMI≧25あるいはBMI≧30に該当するウエスト周囲長が用いられています。

特定健康診査の判定基準は、肥満の定義が①A:中心性肥満(日本のメタボの定義と同様)あるいはB:BMI≧25が必須となっており、中心性肥満およびBMIの両者が肥満の定義に入っています。AかBかにより、さらに②~⑤のなかでいくつ該当するかにより支援の強度が変化します(e-ヘルスネット「特定保健指導の実際」参照)。

②TGとHDL-C(日本のメタボの定義と同様)
③血圧(日本のメタボの定義と同様)
④空腹時血糖≧100またはHbA1c≧5.6または薬物治療
⑤喫煙(②~④で1つ以上該当すれば加える)

そもそもメタボリックシンドロームが提唱されたのは、動脈硬化疾患の重要なリスク因子であるLDL-Cを下げても心血管疾患の発症率は必ずしも低下せず、LDL-C以外の複合した多重因子があるのではないか考えたのが発端です。WHOと米国の定義は独立した因子の重なりと考えたのに対し、IDFと日本は中心性肥満が根本に存在し、それを起点に脂質異常や高血圧、糖代謝異常が発生する、と考えていることが異なります。ですので、メタボリックシンドローム(MetS)の論文を読む際にも、いずれの定義を用いているかで解釈が異なることに注意しなくてはなりません。

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。