特定保健指導って、どうして受けたほうがいいの?
【こたえ】
特定保健指導を受けた人のほうが、受けない人よりも年間の医療費が安くなることがわかっています。また、特定健康診断の受診率や保健指導実施率によって、協会けんぽや健保組合などの保険者に後期高齢者支援金が加算(ペナルティ)されたり、減算(インセンティブ)されます。年1回の健診受診や、保健指導対象者になった際に指導を受けることは、本人にとっても、保険者にとっても重要です。
特定保健指導は効果があったのでしょうか
2020年3月に「特定健診・保健指導の医療費適正化効果等の検証のためのワーキンググループ」取りまとめが発表されました。これは2013~2017年の間に、特定保健指導を利用した人、利用しなかった人で、メタボ指標の改善が見られたかを検証したものです。BMI、腹囲、血圧、脂質代謝、糖代謝のいずれも保健指導を利用した人のほうが改善率が高かったとされていますが、女性のBMI、血圧、LDLコレステロール(LDL-C)については、最終的に差が見られなかったことが報告されています。また、改善率は最初の2年以内は高めであったものの、その後の改善は鈍化することが明らかにされました。
全国の協会けんぽ被保険者約570万人対象の調査では、2012年度の特定健康診査(特定健診)対象者のうち、受診したのは、男性49.9%、女性46.3%でした。さらに、特定保健指導対象者で特定保健指導を利用したのは、動機付けと積極的支援を合計しても、健診対象者の男性2.2%、女性0.8%に過ぎませんでした(表参照)。
この調査は、2012~14 年度のレセプト(診療報酬明細書)に高血圧、脂質異常症、糖尿病(この3つをメタボ傷病と呼んでいます)の診断名が入っている人のうち、がんではなかった人(がんの場合、医療費が高額になるため)のレセプトを対象としたものです。2012年度中の特定健診を「受診・未受診」の群に分け、受診した群については「特定保健指導対象・非対象」の群に分け、さらに対象者を「特定保健指導利用・非利用(積極的支援・動機づけ支援)」の群に分けて、医療費の変化を分析しています(2011年にメタボ傷病関連のレセプトがあった人は除く)。
表 協会けんぽ 2012年度特定健康診査分析
図 調査対象者各群の人数と1人当たり医療費(2014年度分)
(表・図ともに協会けんぽ「平成28年度調査研究報告書『特定健診・保健指導の医療費適正化効果の分析』」より監修者作成)
男女とも、特定健診を受けた人のほうが、受けなかった人よりも医療費が安く、特定保健指導対象者のほうが非対象者よりも医療費が高くなっています。しかし、この時点で特定保健指導対象者よりもずっと人数の多い健診未受診者のほうが、医療費が安くなってしまっています。また、「特定保健指導を利用した人のほうが利用しなかった人に比べ医療費が安かった」とし、特に積極的支援を利用した場合は、「男性では3,790円、女性では4,500円医療費が安かった」として特定保健指導は医療費削減に有効である可能性がある、と結論づけています。とはいえ積極的支援の利用者は男性で1.2%、女性では0.2%にしかすぎない点について考えておきたいものです。
なお、特定保健指導自体のコストはというと、「動機付け支援約6,000円、積極的支援約18,000円」(国庫補助の基準単価)とされています。今後は、アブセンティーイズム(病欠や病気休業の状態)、プレゼンティーイズム(疾病や体調不良を抱えた就業状態)の損失を含めた費用対効果の検証が望まれます。