肥満じゃなくても、脳卒中や心臓病の危険はありますか?
【こたえ】
特定健康診査(特定健診)は、メタボリックシンドロームやその予備群の人を早めに発見し、動脈硬化の進行を抑制して、脳卒中や心臓病の発生を防ごうというものです。メタボというと「腹部肥満」にばかり注目されがちですが、肥満でなくても、高血糖・高血圧・脂質異常を招く生活習慣や喫煙習慣がある場合、脳卒中や心臓病を引き起こすリスクは高まります。メタボと判定されなかった人、肥満でない人も、生活習慣には注意が必要です。
肥満でなくても、メタボのリスクがあれば脳卒中や心臓病発症・死亡の危険が高い!
脳卒中(脳梗塞やくも膜下出血など)と心臓病(狭心症や心筋梗塞など)は、がんと並んで、長らく日本人の「三大死因」とされてきました。死亡率が高いだけでなく、要介護につながりやすいことや、治療期間が長くなりがちで医療費の負担が大きいことがわかっています。特定健診は、これらの原因となるメタボ(メタボリックシンドローム、内臓脂肪症候群)の予防と改善を目的として2008年に始まりました。
しかし、特定健診で引っかかったことがない人や、肥満に当てはまらない人は、脳卒中や心臓病を心配しなくてよいのでしょうか。
2017年に日本学術会議から出された提案書*1では、肥満がなくメタボと判定されないものの、高血糖・高血圧・脂質異常のリスク因子がある人について、虚血性脳心血管疾患(脳梗塞や心臓病)の発症・死亡リスクがメタボの人と同等か、それ以上に高いことを指摘しています。
現行の積極的支援レベル(メタボに該当)の全ての人で、肥満がなくなり、かつリスク因子が0個になった場合、虚血性脳心血管疾患は17%減少するのに対し、非肥満の人の全員のリスク因子が0個になった場合は、同疾患は30%減少すると推定されているのです。
肥満の人だけでなく、肥満でない人も、メタボに関連するリスクには注意が必要です。同提言では、日本では肥満者の割合が世界的に低いレベルにある一方で、高血圧や喫煙習慣がある人が多いこと、そして40歳未満の若年層にも留意が必要であると指摘しています。
●肥満の有無別に見たメタボリックシンドローム因子数による虚血性脳心血管疾患(*1より引用)
