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65歳を過ぎたら、メタボ対策から切り替えて取り組んだほうがよい対策とは?

65歳を過ぎたら、メタボ対策から切り替えて取り組んだほうがよい対策とは?

【こたえ】
フレイルとは、日本老年医学会が2014年に提唱した概念で、「Frailty(虚弱)」の日本語訳です。加齢とともに心身の働きが低下し、社会的なつながりも弱くなってしまった状態のことをいいます。放置すると要介護状態に進んでしまう可能性があります。フレイルに陥る大きな要因に「低栄養」があり、65歳以上に目立ちます。高齢期に入ったら栄養の摂り過ぎに注意するメタボリックシンドローム(以下、メタボ)対策からフレイル対策に目を転じる必要があります。

低栄養から活動量が低下、心身の働きが衰える

厚生労働省の2019年の「国民健康・栄養調査」によると、65歳以上の高齢の男性では12.4%、女性では20.7%が低栄養(体格指数=BMI20以下)の傾向にあるとされています。メタボ対策では、内臓脂肪の蓄積を防ぐために栄養の摂り過ぎへの注意が喚起されています。しかし、高齢者がそのことばかりに気を取られていると、体をつくるたんぱく質や活動のためのエネルギー量が不足し、低栄養になりかねません。

低栄養は、筋力が落ちて身体機能が低下する「サルコペニア」という状態を招く要因と指摘されています。低栄養が慢性化するとサルコペニアも進行し、筋力低下が進んで活動量が減少。こうして、外出や人と会うことがおっくうになると体力も気力も弱まり、社会的なつながりも少なくなってフレイルという状態に陥ってしまうのです。日本では高齢者の8.7%がフレイルであるという調査があり*、その割合は加齢とともに増えているとされています。

早く気づいて積極的な対処を

フレイルはできるだけ早く気づいて積極的に対処することで、改善の効果が大きくなると考えられています。下記にフレイルの評価として国際的によく用いられている基準をもとに、日本人高齢者に合った指標がありますので、参考にしてみてください(国立長寿医療研究センターホームページより)。

表 改訂日本版CHS基準(改訂J-CHS基準)
項目 評価基準
体重減少 6カ月で、2kg以上の(意図しない)体重減少
筋力低下 握力:男性<28kg、女性<18kg
疲労感 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
歩行速度 通常歩行速度<1.0m/秒
身体活動

①軽い運動・体操をしていますか?
②定期的な運動・スポーツをしていますか?

上記の2つのいずれも「週に1回もしていない」と回答

3項目以上に該当:フレイル、1-2項目に該当:プレフレイル※、該当なし:通常

※プレフレイルとは、フレイルの前段階の状態のこと。健康とフレイルの間に位置する。

Satake Sand Arai H.Geriatr Gerontol Int.2020;20(10):992-993

荒木 葉子 先生

監修者 荒木 葉子 先生 (産業医・内科医 荒木労働衛生コンサルタント事務所所長)
慶應義塾大学医学部卒業後、内科・血液内科専攻。カリフォルニア大学サンフランシスコ校留学。報知新聞社産業医、NTT東日本東京健康管理センタ所長を経て、現在荒木労働衛生コンサルタント事務所所長。内科専門医・産業医・労働衛生コンサルタント。企業の労働衛生と半蔵門病院で内科診療を行う。主な著書に『臨床医が知っておきたい女性の診かたのエッセンス』(医学書院)、『働く女性たちのウェルネスブック』(慶應義塾大学出版会)など。