健診で腹囲が基準値を超えた…内臓脂肪は何が怖い?
【こたえ】
内臓の周りに蓄積する脂肪を内臓脂肪といい、これが過剰になると人間の生体維持にかかわる物質(生理活性物質)の分泌に異常が起こります。その結果、血圧や血糖値が上がりやすくなり、重大な生活習慣病につながる危険が高まります。内臓脂肪がたまっているかどうかを判断するのが、特定健診で行われる腹囲の測定です。
腹囲は内臓脂肪型肥満を判断する目安
体脂肪には、皮膚のすぐ下にある皮下脂肪と腸の周りにつく内臓脂肪の2種類があり、内臓脂肪が多いタイプを内臓脂肪型肥満といいます。皮下脂肪型肥満は女性に多く、内臓脂肪型肥満は男性に多くみられます。どちらの肥満も健康に悪影響を及ぼしますが、生活習慣病とかかわりが深いのが内臓脂肪型肥満です。
内臓脂肪が過剰にたまる内臓脂肪型肥満は、腹部CT検査で内臓脂肪の面積が100㎠以上ある場合に診断されますが、これに相当するのが腹囲測定で男性85cm以上、女性90cm以上の場合です。
女性は女性ホルモンの影響から内臓脂肪よりも皮下脂肪がつきやすいために、腹囲の判定基準が男性よりゆるくなっていますが、ホルモンの分泌が減る更年期以降になると内臓脂肪がたまりやすくなります。
また、20歳のときから体重が10㎏以上増えたような場合、増えた分のほとんどは脂肪と考えられるため生活習慣の改善が必要です。
内臓脂肪の蓄積はさまざまな生活習慣病を引き起こす
脂肪細胞からは、体の機能を調整するためのさまざまな生理活性物質が分泌されていますが、内臓脂肪がたまり過ぎるとそれらが分泌異常を起こします。血圧や血糖値を下げる善玉のアディポネクチンが減り、一方で、血圧を上げるアンジオテンシノーゲンや血糖値を上げるTNF-α(アルファ)、血液を固まりやすくするPAI-1(パイワン)などの悪玉物質が多く分泌されるようになるのです。
このため内臓脂肪型肥満の人は、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病になりやすく、今は血圧や血糖値などの検査項目に異常がなくても、将来的に数値が悪化する恐れがあります。さらに動脈硬化が速く進み、心筋梗塞や脳梗塞といった命にかかわる病気を引き起こす危険が高まります。そればかりか、がんや認知症の原因になることもわかってきました。