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メタボだった親も、高齢になるにつれて食が細くなり……注意すべきことは?

メタボだった親も、高齢になるにつれて食が細くなり……注意すべきことは?

【こたえ】
高齢者の食が細くなることで心配なのは、「フレイル」の前段階になっていないかということです。進行してフレイルになると介護が必要な状態に陥りやすいため、おおむね65歳を過ぎたら、メタボ対策からフレイル対策に切り替えることが大切です。本人も家族も体重の変化に注意しましょう。

フレイルとともに心配されるのは、低栄養によるサルコペニア

フレイルとは、加齢とともに体の機能の低下が進んで健康障害が起こりやすくなっている状態のこと。感染症などにかかると運動機能や認知機能が低下して、容易に要介護状態になってしまうことから、健康状態と要介護状態の間の段階と位置づけられています。

そのフレイルとともに心配されるのが、筋肉量の減少が起こる「サルコペニア」です。これは、加齢に伴う食事量の減少から栄養不足になり、身体機能や筋力低下に陥るもので、高齢者の6~12%にみられるということが明らかになっています

サルコペニアになると、身体機能が低下して活動量が減ります。体を動かさなければ必要なエネルギー量は少なくなり、食事量も減少します。このため活動量はますます低下してさらに食事量が減り、やがてはフレイルに陥るという悪循環になってしまいます。サルコペニアとフレイルは深く関連しているため、この悪循環を断ち切って健康状態を回復するには低栄養を改善することが重要です。

中年期以前よりも高めのBMIをめざす

高齢者が低栄養からやせ過ぎにならないよう注意を促すため、2020年版の「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省)では、65歳以上が目標とすべきBMI(体格指数=体重[kg]÷身長[m]÷身長[m])を「21.5~24.9」と、それ以前(2015年度版:50~69歳「20.0~24.9」/70歳以上「21.5~24.9」)より下限を引き上げました。高齢期では中年期以前と異なり、BMIは少し高めのほうが望ましいことが、統計などからわかってきました。また、2020年4月から、75歳以上の健診でフレイルの可能性のチェックが追加されました。

65歳を過ぎたら、メタボよりもフレイルに注意し、毎日の食事をしっかりとって目標とすべきBMIの範囲内に体重を維持することをめざしましょう。

板倉 弘重 先生

監修者 板倉 弘重 先生 東京大学大学院医学研究科卒。同大学第三内科、国立健康・栄養研究所臨床栄養部長、ブラジル リオグランデヂス-ルカソリック大学客員教授、茨城キリスト教大学生活科学部食物健康科学科教授等を経て現職。日本臨床栄養学会理事長、日本栄養改善学会理事、日本栄養・食糧学会副会長、日本動脈硬化学会評議員名誉会員、日本病態栄養学会理事、第33回日本動脈硬化学会総会会長などを歴任。