文字サイズ

家で血圧、測っていますか?健診で正常でもキケンなことも……

家で血圧、測っていますか?健診で正常でもキケンなことも……

高血圧は、喫煙と並んで日本人の生活習慣病による死亡リスクの最大要因の1つです。医療機関での血圧測定では正常でも、朝や夜に血圧が上がる「仮面高血圧」という厄介な病態があり、健診では異常なしでも必ずしも安心とはいえません。20歳以上の日本人の2人に1人が抱えているという高血圧に気づくには、家庭での血圧測定の習慣が重要になります。

怖い「仮面高血圧」の発見には家庭での血圧測定を

高血圧とは、血流の圧力が高く、血管の壁に強い負担がかかっている状態をいいます。この状態が続くと、血管壁が傷ついて動脈硬化が進みます。しかし、自覚症状はほとんどなく、心筋梗塞や脳卒中など命にかかわる病気に突然襲われるリスクが高まります。また、30~40代での高血圧は、やがて認知症のリスクを高めるともいわれています。

厄介な仮面高血圧は、昼間に医療機関などで測定しても正常値なのに、夜間や早朝、あるいは職場にいるときなどに血圧が上がるタイプで、健診などでは見逃されがちです。このため、自分は高血圧ではないと思って放置していると、数年後には危険な病気を引き起こすことになりかねません。

仮面高血圧に気づくには、家庭で血圧を測って自分の血圧の変動を知ることが大切であり、日本高血圧学会でも家庭血圧の測定値を重要視しています。同学会の高血圧診察基準では、医療機関での収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上を高血圧と診断し、自宅で測る場合はそれらより5mmHg低い値で診断します。

家庭で朝晩など決まった時間に測定して記録し、135mmHg/85mmHg以上が続くときには、健康診断の際やかかりつけ医を受診するときに、医師に相談しましょう。

高血圧の最大の原因は、食塩のとり過ぎ

高血圧をもたらす原因はさまざまありますが、最大のものは食塩のとり過ぎです。私たちの血液中の塩分濃度は、常に一定に保たれる働きがあります。食塩をとり過ぎると、塩分濃度を一定に保つために血液中の水分量が増え、その結果として血液量も増えて血圧が高くなります。

日本人の食生活は、食塩摂取量が多くなりがちです。麺類のつゆは残す、しょうゆやソースは料理に直接かけずに小皿に少量ずつつけるようにするなど、減塩を心がけましょう。さらに、野菜や果物、大豆製品に豊富なカリウムは、腎臓から食塩を排泄する働きがあるので、これらを意識的にとることも高血圧の予防につながります。

板倉 弘重 先生

監修者 板倉 弘重 先生 東京大学大学院医学研究科卒。同大学第三内科、国立健康・栄養研究所臨床栄養部長、ブラジル リオグランデヂス-ルカソリック大学客員教授、茨城キリスト教大学生活科学部食物健康科学科教授等を経て現職。日本臨床栄養学会理事長、日本栄養改善学会理事、日本栄養・食糧学会副会長、日本動脈硬化学会評議員名誉会員、日本病態栄養学会理事、第33回日本動脈硬化学会総会会長などを歴任。