一刻も早い治療開始が重要な脳梗塞。メタボ予備群の人も要注意
かつては日本人の死因の第1位を占めていた脳卒中。その多くは脳血管が詰まる脳梗塞(のうこうそく)です。寒い冬の時期だけでなく暑い時期にも多発し、しかも初期には熱中症と症状が似ています。脳梗塞は一刻も早い治療開始が重要です。9月に入ったとはいえ、厳しい残暑はしばらく続きそうです。脳梗塞の兆候を早めに見つけるチェック法と予防のポイントを頭に入れておきましょう。
日本人の脳卒中の約7割を占める脳梗塞。脱水が発症の引き金に
脳梗塞は、脳に栄養を送る脳動脈が狭くなるか、詰まるかして血流が滞り、神経細胞が障害を受ける病気です。脳卒中はこの脳梗塞のほか、脳血管が破れる脳出血、血管にできたこぶが破裂するくも膜下出血があり、日本人の脳卒中の約7割は脳梗塞が占めるといわれます。
また、脳梗塞は、血管の詰まり方や原因によってラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症の3つのタイプに分類されます。細い血管の動脈硬化によるものがラクナ梗塞、太い血管の動脈硬化によるものがアテローム血栓性脳梗塞、心臓内にできた血栓(血液のかたまり)が血流にのって脳にまで流れて詰まるのが心原性脳塞栓症と呼ばれます。
3つのタイプのうち、暑い時期にも起こりやすいのが前者2つで、その引き金になるのが脱水です。汗をかいて体内の水分が不足した状態が続くと、血液も粘っこくなって動脈硬化がある血管では血流が詰まりやすくなります。このため、暑さが残っている時期には脳梗塞への注意も怠ることはできません。
脳梗塞に早く気づくための「FASTチェック」
まだ十分に暑い気温のもとで「頭がボーッとしている」「言葉がはっきりしない」などといった症状があったら、まずは熱中症を疑うかもしれません。脳梗塞の場合には、めまいや体の片側のしびれなどの症状も現れるものの、ほとんどの場合には1時間以内や早いときには数分で治まってしまうことがあります。もしもこんな症状に気づいたら、脳梗塞も疑ってみることが重要です。そのためのツールとして、アメリカで提唱された「FAST(ファスト)チェック」という方法があります。
●FASTチェックとは
- Face(顔)……「イーッ」と言いながら口を横に広げ、顔の片側だけがゆがんだり不自然に下がったりしていないかをチェック。
- Arm(腕)……両腕を前に出し、手のひらを上にして肩の高さまで上げ、5秒間目を閉じた後、どちらか片方の腕が上がらないか、上がっても下がってきてしまうかをチェック。
- Speech(言葉)……「今日はいい天気」など簡単な言葉を発音し、スムーズに話せるかをチェック。
以上の3つのチェックのうち1つでも当てはまるなら、発症したTime(時間)をメモしてただちに救急車を呼ぶ。
時間のメモが必要なのは、発症してから4.5時間以内と8時間以内の患者に対してだけ行える特殊な治療があるからで、メモはその判断の重要なデータになります。