睡眠不足を放置していると、糖尿病などの原因にも
運動と食事は生活習慣病の予防・改善を進める大きな柱ですが、これに加えて「睡眠」の重要性も明らかになってきました。睡眠不足が肥満や脂質異常症、2型糖尿病、高血圧などを引き起こすことが報告されています。よりよい睡眠をとることも、メタボリックシンドローム対策の柱に加えましょう。
睡眠不足はさまざまな代謝異常を引き起こす
人間の一晩の睡眠では、脳を休ませる深い眠り(ノンレム睡眠)と、体は眠っているが脳は起きているような浅い眠り(レム睡眠)を繰り返しています。一晩の睡眠の前半では、ノンレム睡眠の中でも特に深い眠りである徐波睡眠が多く現れ、副交感神経の活動が上昇し、血圧の低下や血糖コントロールの改善が行われるといわれます。こうした働きのある睡眠の時間が足りないと、体にはさまざまな不調が起こります。
食欲をコントロールするホルモンとの関連では、レプチン(食欲抑制ホルモン)の分泌が低下し、反対にグレリン(食欲増進ホルモン)の分泌が増えるという研究報告があります。そのため、これらのホルモンのバランスが乱れて食欲が増進し、肥満になりやすいと考えられています。また、甘みや塩みの強いもの、炭水化物などへの欲求が高まる傾向もみられるといわれます。
睡眠不足はまた、血糖値をコントロールするホルモンであるインスリンの分泌や働きの低下をもたらし、糖尿病の発症や悪化の危険があります。さらに、善玉コレステロールといわれるHDLコレステロールの低下や中性脂肪の増加など、脂質異常も引き起こすことが指摘されています。
体内時計との関連も重要です。不摂生な生活などから体内時計のリズムが乱れると、睡眠障害が起こりやすくなり、糖尿病の危険が高くなります。
睡眠障害の治療で血糖コントロールの改善も
糖尿病はさまざまな合併症が危険とされています。それを防ぐには、血糖値のコントロールはもちろんですが、睡眠の質を高めることも重要であることが明らかになってきました。2型糖尿病の患者で睡眠中の脳波を調べると、特に深い睡眠である徐波睡眠が短くて脳が十分に休めていないことがわかったのです*1。
血糖値が高いと、早朝の血圧上昇や中性脂肪の増加などをもたらします。これは、血糖コントロールの悪化→睡眠障害→早朝高血圧→心筋梗塞や脳卒中のリスク上昇――という悪循環に陥りやすいことを示しています。
このように、糖尿病と睡眠障害は密接な関係にあることがわかり、糖尿病の生活指導には睡眠障害の治療も重要な柱と考えられています。