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お酒を飲まないのに脂肪肝に! NAFLDにご注意を

お酒を飲まないのに脂肪肝に! NAFLDにご注意を

特定健康診査(メタボ健診)で基準値から外れたり、異常を指摘されたりするなどの多くは脂肪肝などの肝機能障害です。お酒の飲みすぎでおこることが多いのですが、お酒を飲まない人に見つかる「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルディー)」の増加も問題視されています。肝硬変や肝がんに進行するリスクがあるため、予防のためには生活習慣を見直すことが重要です。

主な原因は糖質のとりすぎ

脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪が過剰にたまった状態をいいます。アルコールのとりすぎを原因とするアルコール性の脂肪肝が肝炎や肝硬変に進みやすいのと同様に、お酒をあまり飲まなくてもおこる非アルコール性の脂肪肝でも、重い肝臓の病気に進んでしまうことがあります。このように、非アルコール性の脂肪肝から肝炎や肝硬変にまで進行した状態も含めた肝臓病のことを、英語表記の頭文字をとってNAFLDと称しています。

主な原因は、ご飯やめん類、甘いものなどに含まれる糖質のとりすぎです。活動のエネルギーとして利用されずに余ってしまった糖質が、中性脂肪に変換されて肝臓にたまるのです。

NAFLDになると肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症を伴っていることが多く、メタボリックシンドロームとも密接に関連しています。また、心筋梗塞や脳卒中、大腸がん、乳がんなどのリスクも高まります。

NAFLDの患者は全国に1,000万人以上いると推計され、メタボの増加とともに患者数の増加が懸念されています。年齢層別にみると、男性では40歳代と50歳代、女性では60歳代に多いという報告があります。

自覚症状がないまま進行する

NAFLDの多くは脂肪肝のままで、病気の悪化はみられないとされていますが、10~20%の人は少しずつ悪化して肝硬変や肝がんを発症することがあります。この場合、「非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)」と呼ばれます。

肝臓は再生力が強く、多少の異常があってもすぐには症状が現れません。たとえNASHにまでなっていても、病気がかなり進行しないとほとんど症状が出ないため、自覚症状からNASHになっているかどうかを判断することは難しいとされています。健診などで「脂肪肝の疑いあり」と診断されたら、たとえ自覚症状がなくても一度は専門医を受診して詳しく検査してもらうことが賢明です。

板倉 弘重 先生

監修者 板倉 弘重 先生 東京大学大学院医学研究科卒。同大学第三内科、国立健康・栄養研究所臨床栄養部長、ブラジル リオグランデヂス-ルカソリック大学客員教授、茨城キリスト教大学生活科学部食物健康科学科教授等を経て現職。日本臨床栄養学会理事長、日本栄養改善学会理事、日本栄養・食糧学会副会長、日本動脈硬化学会評議員名誉会員、日本病態栄養学会理事、第33回日本動脈硬化学会総会会長などを歴任。