糖尿病は認知症リスクを高める。悪しき生活習慣の改善を
糖尿病は、血液中を流れるブドウ糖(血糖)の量が増えすぎる病気で、動脈硬化の進行を早め、脳梗塞や心筋梗塞になるリスクを高めます。また、近年では認知症になるリスクを高めることも明らかにされています。
高血糖状態が続くと、神経細胞の障害にかかわる物質が蓄積する
認知症は、認知機能の低下などが起こる進行性の脳の病気です。認知症は、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症とに大きく分類されますが、かねてより、糖尿病は脳血管性認知症の危険因子とみなされていました。脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などによって起こる認知症であり、これらの脳血管障害は血糖が高い状態が続くと起こりやすくなるのです。
一方、アルツハイマー型認知症が起こるメカニズムはまだわかっていませんが、脳内にアミロイドβというたんぱく質が蓄積されて神経障害を起こすのではないかと考えられています。このアミロイドβを分解して、脳に蓄積しないように働いているのがインスリン分解酵素です。
ところが、糖尿病でインスリンの効きが悪い状態(インスリン抵抗性)になると、インスリンが大量に必要となって(高インスリン血症)、そのためにインスリン分解酵素も大量に使われてしまいます。その結果、脳内のアミロイドβを分解することができず、蓄積が進んでしまいます。また、脳内のインスリン作用が不足することも、脳の認知機能を低下させる一因と考えられています。
糖尿病の予防が認知症の予防へとつながる
糖尿病は生活習慣病の「代表格」で、食べすぎや飲みすぎ、運動不足、喫煙、ストレスなど、悪しき生活習慣が最大の危険因子です。また、高血圧や脂質異常症、肥満も、糖尿病の発症・悪化の引き金となります。
また、不摂生な生活習慣は糖尿病の危険因子となるのみならず、脳への影響も少なくないということが近年報告されています。糖尿病の予防が認知症の予防へとつながり、糖尿病になっても血糖コントロールをしていくことで、認知機能の低下を防ぐことにもつながります。糖尿病および糖尿病予備群の人は食事の改善や運動、薬物療法などで、血糖値を上手にコントロールすることが大切です。