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「脱肥満」を目指して減量を始めたい。まず何から始めればよい?

「脱肥満」を目指して減量を始めたい。まず何から始めればよい?

【こたえ】
肥満になる原因は、食事でとる摂取エネルギーが体を動かして消費するエネルギーよりも多く、消費されない分が体脂肪として蓄積されるため。そこで、肥満を解消しようとすると、まずは食事量を減らすことを考えがちです。しかし、それだけで減量を目指すと筋肉も減らしてしまいます。食事と運動を組み合わせた減量プランを考えましょう。

「内臓脂肪型肥満」は生活習慣病の危険度が高い

消費しきれなかったエネルギーが体脂肪としてたまり、過剰となった状態が「肥満」です。肥満には、体脂肪が内臓周辺に多く蓄積する「内臓脂肪型肥満」と、主に腰回りや太ももなどの皮膚の下にたまり内臓脂肪は少ない「皮下脂肪型肥満」があります。

2つのタイプの肥満のうち、メタボ健診で問題とされるのは前者です。内臓脂肪に蓄積する中性脂肪が過剰に増えると、脂肪細胞から分泌されるさまざまなサイトカイン(生理活性物質)のバランスの乱れを引き起こします。そして、血糖値や血圧、血液中の脂質に悪影響を与え、生活習慣病の発症リスクを上げて動脈硬化を進行させる原因となります。動脈硬化は一度発症すると、血管を元通りの状態にするのは難しく、進行すると心筋梗塞や脳卒中などで命の危険を脅かされるリスクが高まります。

肥満をもたらす要因は生活環境や生活習慣

特定健康診査(メタボ健診)では、腹囲を測定し、男性85cm以上、女性90cm以上、またはBMI(体格指数=体重[kg]÷身長[m]÷身長[m])が男女とも25以上で「肥満」と判定します。女性の腹囲が90cm以上と男性に比べて値が大きいのは、女性ホルモンの影響で内臓脂肪よりも皮下脂肪がつきやすいからです。しかし、更年期を過ぎると女性も内臓脂肪がつきやすくなるので注意が必要です。

一般的に、肥満は遺伝の影響が強いと考えられがちですが、コロナ禍の影響での食習慣の変化や身体活動量の低下などで摂取エネルギーが過剰になる傾向が高まっています。肥満の家系においても、遺伝のみならず、家族の食習慣や運動習慣など共通した生活習慣が肥満の原因として考えられています。重要なのは遺伝よりも生活環境および生活習慣といえるでしょう。

板倉 弘重 先生

監修者 板倉 弘重 先生 東京大学大学院医学研究科卒。同大学第三内科、国立健康・栄養研究所臨床栄養部長、ブラジル リオグランデヂス-ルカソリック大学客員教授、茨城キリスト教大学生活科学部食物健康科学科教授等を経て現職。日本臨床栄養学会理事長、日本栄養改善学会理事、日本栄養・食糧学会副会長、日本動脈硬化学会評議員名誉会員、日本病態栄養学会理事、第33回日本動脈硬化学会総会会長などを歴任。