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「よく噛める」ことが、どうしてメタボ予防につながるの?

「よく噛める」ことが、どうしてメタボ予防につながるの?

【こたえ】
食事をしっかりとよく噛める状態にないと、野菜など噛みごたえのある食べ物を避け、やわらかく脂質や糖質の多いものに偏りがちになります。その結果、栄養バランスが崩れて生活習慣病のリスクが高くなってしまいます。特定健康診査(メタボ健診)の質問票には、食事摂取時の状況を尋ねる項目があります。

よく噛めると食べすぎを防ぎ、肥満予防につながる

食べ物をよく噛んで食べることは、肥満の予防につながります。噛む刺激によって脳内物質が分泌されて満腹サインが脳に伝わり、食べすぎにブレーキがかかるのです。また、メタボリックシンドローム(メタボ)の元凶ともみなされている内臓脂肪の分解が促進されることも指摘されています。

食事の摂取状況はメタボと深い関連があり、メタボ健診の質問票には、「食事を噛んで食べる時の状態はどれにあてはまりますか」という項目があります。回答は、「何でも噛んで食べることができる」、「歯や歯ぐき、かみあわせなど気になる部分があり、噛みにくいことがある」、「ほとんど噛めない」の中から選ぶことになっています。

食べ物をよく噛むためには、健康な歯を維持する必要があります。むし歯や歯周病、歯が抜けているなどの状態では、噛みごたえのある食材は食べられません。重視しなければならないのは、ミネラルやビタミン、食物繊維が豊富な野菜を十分に摂取すること。一方で、やわらかくて食べやすいご飯やパン、めん類、お菓子など脂質や糖質の多い食品を好んで食べると、生活習慣病のリスクが高まることが指摘されています。

よく噛めない・噛みにくいという状態にあるなら、早めに歯科に受診することをお勧めします。

ゆっくり食べることもメタボのリスクを軽減させる

「噛む」ことと同時に、人と比較して食べるスピードが速いかどうかを問う内容もメタボ健診の質問票に含まれています。

速食い(はやぐい)の人は、肥満度(BMI※)が高い傾向にあり、20歳時点からのBMIの増加量も高いという調査報告があります。また、速食いの人は一般

の人と比べて、3年後のメタボの発症リスクが約2倍だった、という指摘もあります。

メタボのリスクを軽減するには、食事の一口ごとにゆっくりよく噛むように意識すること。これは日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン」でも「そしゃく法」という行動療法の1つとされ、厚生労働省でも一口30回噛む習慣を提唱しています。

※BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

板倉 弘重 先生

監修者 板倉 弘重 先生 東京大学大学院医学研究科卒。同大学第三内科、国立健康・栄養研究所臨床栄養部長、ブラジル リオグランデヂス-ルカソリック大学客員教授、茨城キリスト教大学生活科学部食物健康科学科教授等を経て現職。日本臨床栄養学会理事長、日本栄養改善学会理事、日本栄養・食糧学会副会長、日本動脈硬化学会評議員名誉会員、日本病態栄養学会理事、第33回日本動脈硬化学会総会会長などを歴任。