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思いっきり泣いて心を癒そう

思いっきり泣いて心を癒そう

 思いっきり泣いたあと、「気分がすっきりした」という経験をもつ人は多いでしょう。実は、涙は心にも体にも癒し効果があることが、最近の研究でわかってきています。悲しいときや感動したときなどは、我慢するより思い切り泣いたほうが、ストレス解消に役に立つのです。

涙にはストレス解消効果がある

 ストレスと関係の深い自律神経には、緊張や興奮を促す交感神経と、リラックスや安心を促す副交感神経があります。悲しみや感動などで泣いて涙が出るという状態は、交感神経が優位な状態から副交感神経が優位な状態に切り替わることによって生じています。つまり、涙を流して泣くことで、ストレス状態が解消され、リラックス状態になるといえるのです。反対に、泣きたいときに我慢してしまうのは、緊張状態を長引かせ、ストレスをためることにもなりかねません。
 また、泣いた後には、脳内ホルモンの一つで、モルヒネと同様の働きをする物質Sといわれる「エンドルフィン」が増加することもわかっています。エンドルフィンには、強い鎮静作用があり、ストレスを解消してすっきり感をもたらしてくれます。

免疫力を高め、うつ病も予防する!?

 笑うことで免疫力が高まることは、よく話題になりますが、泣くことも免疫力アップにつながることがわかってきています。免疫とは、細菌やウイルスなど体にとっての異物を排除しようとするシステムのことで、血液の中の白血球がさまざまな働きをします。泣くことで、白血球中のマクロフォージ(異物を食べてしまう働きをする)と、ナチュラルキラー細胞(ウイルスなどに感染した細胞をやっつける)が活性化することが確認されています。つまり、免疫力がアップし、風邪などの病気にもかかりにくくなる効果も期待できるのです。
 さらに、生理的に出る涙より、感情が高まって泣くときに出る涙のほうが、含まれる成分が濃いこともわかっています。涙の成分には、水にカリウム、マンガン、塩分、脂肪、たんぱく質などが含まれています。そのなかでも、うつ病と関係があるといわれるマンガンは、血液中の30倍も含まれるとか。涙を流してマンガンを体外に排出することで、うつ病になりにくくするという仮説もあるくらいです。
 ストレスがたまらないように、泣きたいときは我慢せず泣く。ストレスを解消するためには、積極的に「思いっきり泣く」ことを試してみてはいかがでしょうか?
 そのためには、
●泣ける場所をつくっておく
●泣ける相手を見つける
●泣ける映画や小説などを探しておく
こともおすすめです。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。