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悩みごとを打ち明けられたら……

悩みごとを打ち明けられたら……

心の悩みも人に話すことで、気持ちが軽くなることが少なくありません。そのいっぽう、悩みごとを打ち明けられた場合、深刻であればあるほど、どんな態度をとったらよいのかわからなくなったり、自分自身もつらくなってしまうことになりかねません。

気持ちを汲み取って「聴く」

周囲の人が「元気がない」「落ち込んでいるようだ」など「いつもと違う」様子に気づいたら、「悩みごとでもあるの?」「元気がないけど大丈夫」など、気軽に声をかけてあげましょう。心の悩みは、人に話すことで気分が明るくなったり、些細なことに思えてきたりすることが多いためです。

しかし、実際に悩みを聴く立場に立ったとき、どんな態度をとったらよいのか、わからなくなってしまうこともあるでしょう。また、心の悩みについて「私の場合はね……」などと、自分の経験を話して解決策を提示したり、元気づけようとしたりするのは、かえって逆効果になりかねません(下記参照)。仕事の問題であれば、解決策やアドバイスが助けになることはありますが、心の悩みの場合、その思いや気持ちを汲み取って「聴く」ことが肝心です。
まずは、相手の話に口を挟まず、うなずきながら話を傾聴することに努めるようにするとよいでしょう。理解できないことは、「話を理解したい」という態度で丁寧にゆっくり聞き返すようにします。

「死にたい」といわれたら「死なないで!」と伝えよう

万一、「死にたい」「消えてしまいたい」などと打ち明けられたら、どうしたらよいでしょうか。よく「死ぬ死ぬ」という人ほど実際には死なない、といわれますが、これは誤りです。決して、「死にたいなら死ねば……」など突き放すような態度はとってはいけません。悩みを抱えている人は、心ない一言で死にたい気持ちが加速して、本当に死んでしまうことにもなりかねないからです。

「死にたい」といわれたら、すぐに「死なないで!」と誠意をもって伝えて、じっくり話を聴いてあげましょう。死んでしまう前に、なんらかの手段が残っているはずですし、解決策を提示しなくても、話を聴いてあげることで、死にたい気持ちが緩和されることにつながります。
「死にたい」といわれたときなどは、自分ひとりだけで相手の悩みをとどめておかないで、本人の承諾をとってから、その人の家族や上司、会社の産業医など、力になってくれそうな人に相談するとよいでしょう。
そういう人に知られたくないという理由で、本人が承諾しない場合は、電話やメールで相談できる窓口を紹介したり、医師やカウンセラーに相談することをすすめましょう。

悩みを打ち明けられたり、頼られることはうれしい反面、重荷になってしまうことがあるかもしれません。相談された人もゆとりをもって応じてあげられるよう、悩みを抱え込まず、自分自身の心のケアも大切にしましょう。

こんな聴き方は逆効果!

  • 途中でさえぎる
    相手の話の途中で我慢できず、自分の話をしてしまう
  • 話の途中なのに、簡単に話を終わらせてしまう
    「もう、だいたい話はわかった」「大丈夫だよ」(簡単に励まして話を中断)
  • 「自分の場合は……」と自分の昔話をする
    自分の成功談、苦労話などをする
  • 自分の愚痴をいう
    「あなたも大変だが、自分もこんなに大変だ」「そのくらい自分も経験したし、もっとつらかった」など

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。