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「家族との会話がなく、家に帰るのに気が重いです」

「家族との会話がなく、家に帰るのに気が重いです」

Q. 40代男性です。家族との会話がほとんどなく、まっすぐ家に帰る気になれません。退社後に時間をつぶしてから帰る日々が続きます。このままではよくないとわかっているのですが、どうしたらいいでしょうか。

A. 自分一人でどうにかできる問題ではなく、家族全員が変わる必要があります。まずは挨拶を重ねて、コミュニケーションの修復につなげましょう。

家族との関係の問題で家に帰れなくなる「帰宅拒否症」

安らぎの場であるはずの家に居場所がなく、おつらい様子が伝わってきます。

よくある心の病気のサインとして、「帰宅拒否症」があります。仕事が終わっているにもかかわらず残業したり、退社後に寄り道したりしてしまい、家族が寝静まったころようやく帰宅する――という症状ですが、まさにこの傾向にあると考えられます。あなたに無関心な家族、特にパートナーとのかかわりが負担に感じられ、家に帰れない状態になっているのでしょう。

やがては帰宅しても眠れなくなったり、精神的に追い詰められ、うつ状態におちいってしまうこともあるため、要注意です。

日常の挨拶などの何気ないコミュニケーションから、やりとりを深めましょう

帰宅拒否症は、仕事一筋の生真面目なタイプの人に多く見られます。一家の大黒柱として仕事一筋でがんばってきた一方で、家族からは「仕事を優先し家庭を犠牲にした」と反発され、理解や関心を示してもらえなくなることが発端となるようです。

今すぐ家庭優先に切り替える、というのは難しいことですし無理は禁物ですが、仕事一筋の考えを少し改め、心に余裕をもてるとよいですね。

とはいえ、このような例では、あなただけが変わろうとしても解決できません。時間をかけて、家族とのコミュニケーションの修復をめざす必要があります。まずは第一歩、最低限のコミュニケーションとして、家族に必ず「おはよう」「ありがとう」など、挨拶をするところから始めましょう。

ポイントとして、挨拶にはできるだけ「笑顔」をプラスしてください。明るい笑顔で朝の挨拶ができれば、心に多少の不安があっても、勢いで乗り切れることができるもの。また、笑ったりしゃべったりして表情筋を使うことは、ストレス解消につながります。

家族との明るい挨拶から一日が始まる習慣がつけば、天気やニュース、噂話などの雑談から、楽しい会話へと発展していくでしょう。会話のやりとりが深まれば、いずれは心の中まで打ち解けて話し合える関係に戻れるはずです。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。