文字サイズ

「必死にやった仕事が評価されず、やる気を失ってしまいました」

「必死にやった仕事が評価されず、やる気を失ってしまいました」

Q.20代男性です。大きなプレゼンを任されて必死にがんばったのですが、クライアントに採用してもらえず、社内でも評価されませんでした。一生懸命やっても意味がないように感じ、やる気が出ません。

A.評価がもらえないと必要以上に落ち込んだり、モチベーションを失ってしまうのはもったいないことです。がんばった自分を褒めたり、自分にご褒美をあげたりしてみましょう。

「評価されなかった、もうダメだ」――“認知のゆがみ”が起きていませんか

全力投球でがんばった仕事がよい結果につながらず、自信を失ってしまったのですね。仕事で達成感を得たい、よい評価をもらいたいと思う気持ちは、当たり前の感情です。

とはいえ、長い仕事人生の中では、誰しも失敗したり、不満足な評価しか得られなかったりすることがあるでしょう。その仕事に対して本人がどれだけがんばったかにかかわらず、です。こういうときは、真面目で一生懸命やっている人ほど、落ち込みがエスカレートしてしまうもの。普段は前向きな人でも、自信を失ったり弱気になっていたりすると、「評価されなかった、もう終わりだ」「いくらがんばってもダメだ」と極端な考え方に陥ってしまうことがあります。

しかし、そこには「認知のゆがみ」が起こっているかもしれません。一つよくないことが起こっただけで、すべてダメだと考える“一般化のしすぎ”や、自分の短所や失敗を大げさに捉え、これまでの成功を長所を過小評価する“拡大解釈と過小評価”など、物事の捉え方が偏ってしまっていませんか? 「『認知のゆがみ』の10パターン」で振り返ってみましょう。

自分を褒めたりご褒美をあげたりして、負のスパイラルを防止

少なくとも相談者さんがこの仕事に必死に取り組んだことは、揺るぎようのない事実です。まず、ここまで一生懸命やった自分を自分で褒めてあげたり、自分にご褒美をあげましょう。

ご褒美は、以前から欲しかったものを買う、マッサージに行く、行きたかった店で食事をするなど、自分で「ご褒美のためにまたがんばろう!」と思えるものであればなんでもかまいません。これはモチベーション向上のためによく使われる手段で、心理学では「外的動機づけ」と呼ばれています。

こうすることで、評価されなかった⇒落ち込んでやる気を失う⇒またうまくいかない…といった負のスパイラルに陥るのを予防できます。

教訓を次へ生かし、自分自身の評価の基準を持って振り回されないように

今はまだ、周りからの評価が得られていないかもしれませんが、時を経て別の仕事につながり、ほかの機会に評価される可能性もあります。今回のことは一つのステップとして捉え、この仕事から得た学びや気づき、教訓を次に生かしましょう。

また、仕事に対する周りからの評価は、一つの基準で測った評価でしかなく、自分という人間や人生そのものの評価ではないことを理解しておきましょう。自分自身の評価の基準をしっかり持って、自分を評価できるようになれば、周りの評価に必要以上に振り回されることもなくなります。そのためには、もっといろいろな人とかかわったり、さまざまな経験を積んで、一つの価値観にとらわれないよう、視野を広げていくことが必要かもしれません。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。