「お酒を飲まないと眠れなくなってしまいました。どうすればいいですか?」
Q.40代男性です。不眠が続いて、毎晩お酒を飲まないと眠れなくなってしまいました。よくないとはわかっているのですが……。アルコール依存症一歩手前なのでしょうか? どうしたらいいですか?
A.アルコールは中途覚醒を起こしやすいため、お酒を頼るのは逆効果といえます。酒量が多くないうちは心配ありませんが、増えてくるとアルコール依存症の危険があります。就寝前にはストレス解消法に取り組み、それでも不眠が続くようであれば受診して、きちんと不眠を改善しましょう。
アルコールが入っていると熟睡できない。就寝前を避けて適量を
おつらい状態、お察しします。相談者さんは、①眠れない、②お酒を飲まずにいられない、という2つの問題を抱えているように見受けられます。
アルコールは少量であれば気持ちをリラックスさせ、入眠をスムーズにさせるため、就寝前に飲む人は多いでしょう。しかし、アルコールが入った状態で寝付くと中途覚醒が起こりやすく、熟睡できません。寝酒がおすすめできないことはもちろんのこと、「飲んで寝る」習慣を作ってしまったり、酒で一時的にストレスから逃れる→酔いが醒めたらまたストレスと対峙しなければならない、という悪循環を作ってしまうのはよくありません。
相談者さんが心配されている「アルコール依存症」は、数時間おきに飲酒してしまう(連続飲酒)、お酒が切れるとイライラやしびれが起こる、お酒を飲んではいけない状況でも飲みたくてたまらない、などの症状が起こるもので、単に眠るためにお酒に手が伸びる程度ではアルコール依存症とはいえません(詳しくは、厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」のアルコール依存症のページを参照してください)。
しかし、多量飲酒(純アルコール量で1日平均60gを超える飲酒。ビールなら中びん3本、日本酒なら3合弱など)を続けているとアルコール依存症の危険性が高まりますので、適量(純アルコール量で1日平均20g程度)を守るようにしましょう。また、週に1~2日は飲まない「休肝日」を設ける、休みの日に朝や昼から飲まない、ということも心がけましょう。アルコール摂取は適度であれば健康に効果がある、というデータはたくさんあります。
アルコール依存症を含めた「アルコール健康障害」は重大な問題
多量飲酒はさまざまな健康問題を招き、飲酒運転、暴力、虐待、自殺などにつながり、本人だけでなく家族の問題や社会問題にも発展することから、わが国では、「アルコール依存症その他の多量の飲酒、未成年者の飲酒、妊婦の飲酒等の不適切な飲酒の影響による心身の健康障害」を「アルコール健康障害」と定義しています。そして、アルコール健康障害の予防や対策に加え、アルコール健康障害をもつ人やその家族が日常生活・社会生活を円滑に営めるように支援することを目的としたアルコール健康障害対策基本法が2014年に施行、これに基づいたアルコール健康障害対策推進基本計画が2016年に策定されています。
アルコール健康障害については、各自治体の保健所や、各都道府県・政令指定都市に設置された精神保健福祉センターなどで相談を受け付けていることを知っておきましょう。
ストレス解消法に取り組んで不眠の解消に努め、効果がなければ受診を
さて、就寝前のお酒はやめたものの、眠れなくて困る……ということであれば、お酒以外のストレス解消法でリラックスしましょう。ストレッチ、ヨガ、アロマテラピー、音楽鑑賞、読書など、1日10分でもかまいません。筋弛緩法、自律訓練法、瞑想などもおすすめです(サイト内関連記事のリンクを参照してください)。休日であっても早起きを心がけ、睡眠サイクルを整えることも大切です。
それでも眠れないようであれば、うつ病のサインである可能性もあります。早めに心療内科や精神科を受診し、医師の指示に従って睡眠薬を服用するなどで不眠を解消しましょう。うつ病にかかっている場合は、アルコールで悪化する恐れがあるので、なおのこと不適切な飲酒は避けたほうがよいでしょう。