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「仕事がつらくて辞めたいです。働く意味がわからなくなってしまいました」

「仕事がつらくて辞めたいです。働く意味がわからなくなってしまいました」

Q.20代女性です。仕事で壁にぶつかってしまい、つらくて辞めたいです。家族には「辞めてどうなる」と言われますが、毎日を乗り切ることに精一杯で、働く意味がわからなくなってしまいました。

A.働くのは生活のためでもありますが、成長や自己実現のため、そして周りの人のため……人によってさまざまな理由があるでしょう。人生を犠牲にしてまで仕事をする必要はないので、つらくなったら立ち止まってみましょう。

働く理由は人それぞれ。自分が何を大切にしたいか考えてみましょう

相談者さんは仕事へのモチベーションが下がり、大きな壁を乗り越える気力がなくなってしまったのですね。仕事は、フルタイムの人であれば生活の約1/3を占めており、人生のなかで重要なものです。しかし、なんのために働いているのかを考えないまま、日々に追われている人は多いでしょう。

働く理由として、大きくは次の3つが挙げられますが、人それぞれなので、これ以外にもさまざまな理由が考えられます。働くうえで、自分が何を大切にしているかを考えてみましょう。

①生活のため
 欠かせない理由です。お金さえもらえれば、と考える人もいるでしょう。しかし、給料がよければそれだけで続けられるかというと、必ずしもそうではありません。ワーク・ライフ・バランスも大切です。

②修行の場、成長の場、自己実現の場として
 自分に与えられた仕事の中で、壁にぶつかって悩み、それを乗り越えることを通して、自分という人間を知る。そして、成長したことでさらに大きな仕事が与えられる……。このサイクルがあるからこそ、人は仕事を続けていけるのかもしれません。最終的に、仕事で自己実現を果たすことができれば、なおよいでしょう。

③周りの人を楽にするため
「はた(傍)を楽にする」ためにも、私たちは働いているといえます。働くことで、人は必ず誰かの役に立っています。そして、必要とされることで、社会に居場所ができます。もちろん、家族のために働く、という人もいるでしょう。周りの人の役に立っているという感覚は、自分の心の健康にも役立ちます。

確固たる働く意味をもつのは重要。でも、仕事のために生きてはいけません

有名な精神科医で心理学者のV.E.フランクルは、人間には「意味への意思がある」――つまり、人間は常に行動に意味を求める存在であると言っています。仕事でもなんでも、「自分にとっての意味」がなければ、続けていくのは困難で苦痛なことです。自分にとっての働く意味がどっしりと固まっていれば、大きな壁にぶつかってもモチベーションを維持し、乗り越えられるかもしれません。

とはいえ、仕事は自分の人生をより充実させる手段となる「志事」であるべきです。心や命を失う「死事」になってはいけません。仕事をするために生きている自分に気づいたら、歩みを少し止めてみることも必要でしょう。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。