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「嫌われるのが怖くて、新しい人間関係に入っていけません」

「嫌われるのが怖くて、新しい人間関係に入っていけません」

Q.30代女性です。ママ友の輪に入っていけなくて悩んでいます。子どものためにも仲良くなりたいのですが、以前の職場で人間関係をうまく築けなかった経験があり、嫌われるのが怖いと感じてしまいます。

A.自分の気持ちも相手の気持ちも大切にする「アサーション」を心がけましょう。自分の気持ちを素直に出せなくなっているのであれば、人を傷つけることや人に嫌われることを必要以上に恐れているのかもしれません。それらを恐れるよりも、失敗を素直に謝ったり、考えの違いを認めたりして、よりよい人間関係を築けるように一歩踏み出しましょう。

人間関係をうまく築くコツは、自分も相手も大切にする「アサーション」

過去に人間関係で失敗した経験から二の足を踏んでしまうという、相談者さんのような人は多いもの。しかし、あなたの目の前の相手は過去にうまくいかなかった相手ではなく、今のあなたも過去のあなたではありません。「アサーション」を味方につけて、新しい人間関係を築きましょう。

「アサーション」は、一言で言うと「自分も相手も大切にした自己表現」。お互いの違いを認めて、自分の思いを素直に表現し、相手の思いにも耳を傾けて理解しようとするものです。考え方や立場などに違いはあっても、気持ちの良いコミュニケーションが交わされることにより、お互いの理解が進み、信頼関係ができていくのです。

アサーションの詳細については、当コーナーの過去記事(「取引先の担当者が苦手で、心身ともに疲れてしまいました」)を参考にしてください。

「失敗してはならない」「人に好かれなければならない」という思い込みはNG

アサーションの考え方は理解できても、なかなか実行できないことがあります。例えば、「人を傷つけてはならない」「失敗してはならない」といった非合理的な思い込みがありませんか? そのような思い込みがあると、発言や相手への接し方に細心の注意を払おうとしたり、必要以上に慎重な行動をとったりして、アサーションがうまくいきません。

「傷つけない(失敗しない)ほうがいいけれど、ときには傷つけて(失敗して)しまうこともある」という、現実的な考え方に切り替える努力をしましょう。どんなに気をつけても相手が傷ついてしまうことはありますし、人間は誰でも失敗するものです。傷つけないようにすることよりも、傷つけてしまったときに素直に謝って、相手との関係を修復することにエネルギーを費やしましょう。

相談者さんのように「人に嫌われるのが怖い」という人は、「人に好かれなければならない」という思い込みにとらわれているといえるでしょう。思ったことを口に出せず我慢してしまったり、自分を抑えて相手に合わせようとしてばかりいると、自分の本当の気持ちや考えがわからなくなってしまうことさえあります。

私たち自身がすべての人を好きになれないのと同じで、すべての人から好かれようとするのは不可能です。「人に好かれたほうがいいけれども、ときには好かれないこともあるし、好かれなければならないわけでもない」と、合理的に考えるようにしましょう。

時には葛藤や対立が避けられないこともある

また、葛藤や対立が人間関係を壊すものと考え、相手との間に葛藤や対立が起こることを恐れていませんか。自分にも相手にも、「ノー」と言ったり何かを要求したりする権利があり、それを大切にするアサーションでは、葛藤や対立は避けられません。

考え方の違いをきちんと受け入れ、葛藤しつつもアサーションを心がけて乗り越えていこうとすることで、人間関係がより深まっていくことにつながります。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。