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「産後つらく、子どもをかわいいと思えません。母親失格でしょうか」

「産後つらく、子どもをかわいいと思えません。母親失格でしょうか」

Q.30代女性、産後2カ月目です。出産を楽しみにしていたのに、産後つらいことばかりで、子どもをかわいいと思えません。母親失格でしょうか。

A.産後うつ病かもしれません。産後うつ病の質問票で自己チェックするなどして、軽視せず早めに専門機関へ相談・受診を。誰かに話を聞いてもらうだけでも、楽になることがあります。

新生児を育てる女性の5~10人に1人に生じるとされる「産後うつ病」

おつらいお気持ち、お察しします。相談者さんのように、産後に赤ちゃんをかわいく思えないばかりか世話が大変で毎日つらいと感じたり、そのような自分を責めて「母親失格」と感じてしまう女性は多くいます。

出産後はホルモンのバランスが不安定になるうえ、慣れない育児や睡眠不足、慢性的な疲労、周囲のサポート不足、授乳がうまくいかないなど、さまざまな事象が重なって、うつ状態に陥ってしまうのです。このような産後うつ病は、産後1、2週間から数カ月以内の女性の10~20%、つまり5~10人に1人という、比較的高い頻度で起こります。軽症で済む場合が多いのですが、重症化した場合は自殺や子どもの虐待につながったり、子どもの発達や精神に何らかの影響を及ぼす可能性があるとされています。

思い当たる症状や、チェックテストで疑いがあれば、受診等の検討を

産後うつ病の症状には、次のようなものがあります。

  • 気分が沈み、日常生活のなかで興味や喜びが感じられない
  • 食欲が低下、または増加する
  • 不眠、または睡眠過多になる
  • 疲れやすい
  • 気力や思考力、集中力が減退する

これらの程度を確認し、産後うつ病を見つけるチェックテストに、「エジンバラ産後うつ質問票」があります。産院の1カ月児健診や自治体の乳児家庭全戸訪問事業(「こんにちは赤ちゃん事業」)、新生児訪問指導等の場で使われることが多いものですが、自分でチェックしてみるとよいでしょう(きずなメール・プロジェクトのサイトにて簡単にチェックできます)。

これは、調査時1週間の状態を知るためのテストで、選んだ回答の合計点数が9点以上の場合、うつ病の疑いがあると考えられます。心療内科や精神科などの心の専門医を受診したり、配偶者や親族、助産師、保健師などに相談しましょう。

なお、「授乳中に薬を飲むのは…」と受診をためらってしまう人もいますが、専門医を受診しても必ず薬物療法を行うわけではありません。本人がやるべきこととやらなくてもよいことを整理したり、本人がやらなくてもよいことについては周囲のサポートを得られるような手助けをするといった環境調整を行ったり、認知行動療法などの心理療法を行うこともあります。

電話相談で悩みを打ち明けるだけでも、気持ちが楽になることがある

産後うつ病には、真面目で、悩みや困りごとを一人で抱え込みやすい人が陥りやすいとされています。とにかく話をきいてもらうだけでも気持ちが楽になることがあるので、受診や対面での相談が難しい場合は、電話相談(厚生労働省「電話相談」)を利用してみましょう。無理せず、まずは誰かに悩みを打ち明けることが大切です。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。