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「うつ病の疑いで欠勤中の社員が、SNSでは元気そう……。どう対処すべき?」

「うつ病の疑いで欠勤中の社員が、SNSでは元気そう……。どう対処すべき?」

Q.50代男性です。入社2年目の部下が、うつ病かもしれないと数日欠勤しています。しかし、同僚からSNSでは元気そうにしているという噂を聞きました。今後、どう対処すべきか頭を悩ませています。

A.従来型のうつ病とは異なるタイプの、いわゆる「新型うつ」と呼ばれるものかもしれません。ゆっくり休養をとらせるよりも、無理のない範囲で仕事を続けさせるなど、社会と切り離さないようにしながら注意深く見守り、専門医の指示も仰ぎましょう。

好きなことをしているときには症状が出ない「新型うつ」

従来のうつ病とは異なるとされる「新型」あるいは「現代型」といわれるうつ病が、若い世代に増えているといわれています。従来のうつ病は、意欲の低下や抑うつ気分、自分を責めるといったネガティブ要素の強い症状が多いものです。

一方で、新型うつとされるものは、周囲の言動に敏感になり、他罰的で衝動的な言動や思想から、感情のアップダウンが激しくなるといわれています。これは、従来のうつ病と比較して、社会的役割などに対する愛着心が少ないためとされています。自己愛が強く、自分中心に考えているため、いやな状況から離れることで症状が緩和されるケースがあります。

そのため、例えば会社には行けないけれど、自分が行きたいと思った場所には行けたり、自分の好きなことをしているときには元気だったりするのです。SNSで元気そうな姿を発信している相談者さんの部下は、このタイプなのかもしれません。

信頼関係を築きながら、本人に合った業務や職種を検討しても

基本的に新型うつの場合、いやだと感じることから逃げたいという思想がベースとなっています。そのため、甘えやわがままと決めつけて説教をしてしまうと、自分を否定されたと感じて悪化する可能性もあります。部下のありのままを受け入れる姿勢でまずは接し、何に対してどう思っているのかを詳しく知ることが対処の第一歩です。部下の話をじっくり聴き、信頼関係を築いていくようにしましょう。

また、感情の起伏が激しいことから、結果的に周囲の社員が振り回されてしまうことも少なくないでしょう。新型うつと思われる社員ばかりに目をとられ、他の社員をないがしろにしてしまうことは、よくありません。他の社員とのバランスを考慮しながら、一定の心理的距離を保ち、本人に合った業務や職種を検討すると症状が急激に改善されるケースもあります。

注意深く見守り、専門医への受診につなげるのが改善への近道

新型うつへの対処は、投薬や休養ではあまり効果がないとされています。新型うつの場合、自己愛が強いタイプが多いので、しっかりと見合った対処をしないと、早期退職されてしまったり、会社に不利益が生じてしまったりしかねません。メンタル不調の社員には、ゆっくり休養をとらせるよりも、無理のない範囲で仕事を続けさせるなど、社会と切り離さないようにしながら注意深く見守りましょう。なお、メンタル不調の原因が、従来型うつや適応障害、発達障害などの場合もあります。専門医への受診を促して、正確な診断を受けるようにしましょう。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。