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「いつも同じミスを繰り返す部下。どんなふうに注意すればよいですか?」

「いつも同じミスを繰り返す部下。どんなふうに注意すればよいですか?」

Q.40代女性です。一緒に仕事をしている部下の物覚えが悪く、何度注意しても同じようなミスを繰り返しています。「何度同じことを言えば…」とうんざりしていますが、どのように注意すればよいでしょうか。

A.自分の気持ちも相手の気持ちも大切にする「アサーション」を心がけ、部下に「何をどのように改善してほしいのか」というゴールを定めたうえで、“事実”、“感情”、“要求”を整理して、具体的かつシンプルに伝えましょう。

感情的に対応すると、部下に伝わらず逆効果に

何度も同じミスを繰り返されると、最初のうちは「次からは気をつけてね」で済んだものの、4回も5回もやられるとうんざりするやら情けないやら。指導しているこちらに手落ちがあるのではないかと悩んでしまう……相談者さんの心中お察しします。

部下がまた同じミスをしたという事実を目の当たりにすると、上司としては、時には頭に血がのぼって、感情的に怒鳴ってしまいたい衝動に駆られてしまうこともあるものです。しかし、これは相手を尊重できていない攻撃的な対応で、怒れば怒るほど、部下は上司が言うことを真剣に聞かなくなってしまいます。そこで自分と相手をともに大切にしながら、自分の思いをきちんと伝える「アサーション」を用いた、基本的なステップをご紹介します。

アサーションの詳細については、当コーナーの過去記事(「取引先の担当者が苦手で、心身ともに疲れてしまいました」)を参考にしてください。

“事実” “感情” “要求”を整理して、具体的かつシンプルに伝えよう

部下を注意する前に、まずは「何をどのように改善してほしいのか」というゴールを定めたうえで、「何が起きているのか」という“事実”、それに対して自分が「どう感じたか」という“感情”、そして部下に「何をしてほしいのか」という“要求”を順番に整理していきましょう。

“事実”を整理する際に注意したいのは、相手だけでなく、自分の言動も含め客観的に観察することです。例えば、思ったとおりの報告書が上がってこなかったとしたら、それは部下のせいだけではなく、自分が明確な指示を出さなかったからかもしれません。

次に、事実に対する自分の“感情”を冷静に言語化します。感情を言語化するということは、感情的になることとは違います。「いい加減にして!」というのは、相手を一方的に攻める感情的な言い方です。しかし、「私の言っていることが伝わっていなくて残念」というのはどうでしょう。感情に任せて一方的に怒鳴りつけたり罵倒したりするのではなく、率直に自分の気持ちを言うこと。これが、感情を言語化するということになります。

そして、どんなことを部下に求めているのかという“要求”を明確に伝えましょう。要求は具体的かつシンプルに。今後どうしてほしいのかということを率直に伝えましょう。その際、「あの時もこうだった」「あの人はできるのに」と、過去のことや他人を引き合いに出さないことが大切です。注意した相手に改善が見られたらそのことをほめる、逆に改善されていなかったら責任をもって再度注意するというように、成長を見守る姿勢も必要です。

部下と一緒に再ミス防止のアイディアを出し、共通のゴールを目指そう

このようなステップには、上司と部下の信頼関係が基盤となります。日ごろから、叱責するよりも一緒に考える姿勢を見せておくことが大切です。注意した後は、部下と時間をとり、同じミスを繰り返さないためのアイディアをともに出し合いましょう。部下が自ら再ミス防止のアイディアを出し、それに対して上司と一緒に実現可能かを検討していくことで、共通の「ミス防止」というゴールができます。今後の部下の成長や、信頼関係の構築にも一役買うことができるでしょう。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。