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「上司や先輩から注意されると頭の中が真っ白になり、仕事に集中できません。」

「上司や先輩から注意されると頭の中が真っ白になり、仕事に集中できません。」

Q.20代女性です。上司や先輩から注意を受けると、ものすごく委縮してしまい、頭の中が真っ白になって、その後の仕事が手につきません。何とか治したいのですが、どうしたらいいでしょうか?

A.「注意=嫌なこと」というとらえ方から「注意=期待されている」というポジティブなとらえ方にチェンジしてはどうでしょう。感情的に受け止めたり責任回避したりせず、問題解決のための行動をとりましょう。

「注意されるのは期待されているから」とポジティブにとらえよう

人から叱られるのは、どんな人にとっても嫌なもの。とはいえ、相談者さんのように、仕事にも支障をきたすほどだと大変ですよね。

しかし、仕事に関して注意してもらえるのは、本当は喜ばしいことです。「注意されるのは嫌なこと」というネガティブなとらえ方を、「注意されるのは期待されているから」というポジティブなとらえ方に変えてみてはいかがでしょうか。上司や先輩が注意してくれるのは、あなたにそれだけの価値があると認めているから。あなたに注意する価値がなければ、何も言われないはずです。注意されることを「成長のチャンスを与えてもらえてよかった」と考えられれば、失敗の経験を糧にして成長できる可能性が広がります。自分が期待されているから注意されると理解することが、問題解決とストレス軽減につながるでしょう。

注意を受けるときには、注意された出来事そのものに焦点を当てて、何をどう改善すればよいかを考えましょう。相手は決して相談者さんの人格を否定したのではなく、その出来事に対して、あなたに改善してもらうことを期待しているのです。このように注意の内容を冷静に受け止め、問題解決に向けた行動をとることで、注意した側、された側の双方がよい結果を得られるでしょう。

もしものときのシミュレーションをして、心の準備をしておく

そもそも人はミスをする生き物です。また、仕事にミスやトラブルはつきもの。これらに対応する方法はありますし、挽回する余地はいくらでもあります。一度や二度のミスでクビになったり、人生が終わったりするわけではありません。日ごろからそのように考えるクセを身につければ、心の重しが少し軽くなるかもしれません。

また、想定しうるミスやトラブルについては、起こる前から「こんな場合にはどう対処したらよいか」「こんなときは誰に相談するのが一番よいか」「信頼できる上司や仲間は誰か」など、もしものときのシミュレーションをして、心の準備をしておくことも大事です。

現状を冷静に受け止め、落ち着きを取り戻して対処しよう

そうは言っても、いざ注意を受けると、冷静に対応できないことがあるかもしれません。もし、頭が真っ白になったりパニックになったりしたときは、意識が「今ここ」ではなく、過去の記憶の中や自分だけの世界に行ってしまっている可能性があります。

そんなときは、目をつぶり大きく深呼吸して、冷静に今の自分と現実を確認しましょう。周囲を見渡して、今いる自分の場所を確認したり、自分の体を触ったりして現実を確認し、気持ちを落ち着かせることが大切です。そして、少しずつ冷静さを取り戻すことができたら、今の状況を整理して、自分は何ができるのか、何をしたらよいかを考えましょう。

ミスやトラブルにどう向き合ったか、どのように対処したか、その経験が自信となり、信頼をアップさせることにもつながります。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。