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「うつ病で休職しました。復職や再発への不安がつきまといます」

「うつ病で休職しました。復職や再発への不安がつきまといます」

Q.30代男性です。会社の人間関係のもつれによりうつ病を発症し、半年間休職しました。治療と休養によって症状が軽減し、そろそろ復職かという状況ですが、会社へ行くことや再発への不安がつきまといます。

A.復職に焦りや自己判断は禁物です。主治医と相談しながら、慎重にリハビリを進めていきましょう。体調が回復してきたら、徐々に休職前の生活リズムに戻していきます。また、復職後も治療を続けながら、無理をせずに少しずつ前進していきましょう。

焦りや自己判断は禁物。復職のタイミングは主治医と相談して慎重に

相談者さんのお悩みの様子が伝わってきます。うつ病によって休職した後の復職については、不安や怖さが伴うのは当然です。

休職が長引いて、これ以上職場に迷惑をかけられないという責任感や、経済的な理由、職場に居場所がなくなるのではないか、といった焦りは復職を考えるきっかけになるでしょう。休職期間中の治療や休養によって、症状が軽くなった、治ったと感じる場合も復職を考えるタイミングとなります。

しかし、うつ病などの気分障害は短期間で完治することは難しく、焦りや自己判断は禁物です。復職のタイミングは主治医と相談し、そのアドバイスのもとで慎重に、適切に判断していかなければなりません。相談者さんの場合も、まずは主治医にきちんと相談して、主治医からの意見を伺うことが大切です。復職を視野に入れたリハビリは治療の一環ですので、あせらず段階的に進めていきましょう。

体調が回復してきたら、生活リズムを整えよう。リワークプログラムという方法も

体調が回復してきたら、復職に向けて、生活リズムを休職前に戻すように心がけましょう。まずは休職前に出勤していた頃と同じ時間に起きて、散歩したり、近くの図書館に通ったりして、昼間の活動時間を徐々にのばしてみましょう。はじめはすぐに疲れてしまったり、読書をしても本の内容が頭に入ってこなかったりするかもしれませんが、焦らず継続することで、少しずつ体力や集中力が回復します。

自分だけで復職の準備を進めることに不安を感じる場合は、主治医に相談してリワークプログラムを利用するという方法もあります。リワークプログラムとは、地域障害者職業センターや医療機関などが実施する復職支援のプログラムで、実際に職場に近い環境の中で軽作業を行ったり、再発を防ぐ方法などを学ぶことができます。障害者職業センターのリワークプログラムでは、本人と会社、主治医との相談を通じ、職場復帰のコーディネートを行ってくれます。詳しくは、主治医や地域の障害者職業センターに相談してみましょう。

主治医や職場、周りの人との協力のうえで、少しずつ前進を

復職に向けた準備を続け、復職に自信がついてきたところで主治医の診察を受け、職場復帰が可能かどうか判断してもらうことになります。医師が「可能」と判断した場合、復職診断書を書いてもらって職場に提出し、上司や人事担当者、産業医などと復職の段取りや今後の働き方について打ち合わせを行います。

会社によっては、正式な職場復帰の前に「試し出勤制度」があれば利用するとよいでしょう。これは、一定期間、試験的に出社して職場復帰が可能か様子をみる制度で、復職への不安を和らげることができます。

うつ病と向かい合いながら復職するには主治医や職場、家族など周りの人たちの理解と協力が不可欠です。復帰後も、治療を続けながら決して無理をせず、ゆっくりと前進していけたらよいですね。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。