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「コロナ禍での業務環境の変化に振り回され、メンタルヘルスの不調を感じます」

「コロナ禍での業務環境の変化に振り回され、メンタルヘルスの不調を感じます」

Q.50代男性です。コロナ禍で在宅勤務が続いていたものの、徐々に元の勤務形態に戻りつつあります。業務環境の変化に振り回され、メンタルヘルスの不調を感じます。

A.環境変化は大きなストレス要因となります。コロナ禍におけるメンタルヘルス不調は、異常に対する正常な反応です。新たな生活様式の中でも、規則正しい習慣を心がけましょう。運動は効果的なストレス解消法になります。部屋の掃除や散歩、エクササイズなどを取り入れてみましょう。改善しないときは、早めに専門の医療機関に受診することをおすすめします。

不安や恐怖を打ち消さずに、不安とうまくつきあっていくことが大切

緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの解除により、在宅勤務や時短勤務が解除になった会社も多いでしょう。慣れないテレワークから解放されたと思う人がいる一方で、相談者さんのように、在宅での業務に順応し始めてきたところで、元の勤務形態に戻ることに戸惑いを感じる人もいるでしょう。

また、新型コロナウイルス感染症が収束したわけではなく、そんな中での活動再開にも不安を感じることと思います。不安という気持ちは、意識すればするほど雪だるま式に増えがちですが、そのような感情を無理に排除する必要はありません。そもそも、生きていくうえで、不安や恐れという感情は避けることができないものです。病気に対する恐れの裏には、健康でありたいという欲求があるように、これらは表裏一体で、ごく自然な感情です。ですから、不安を打ち消そうとするのではなく、まずは不安とうまくつきあっていくことが大切です。

変化への対応はゆっくりと。また、規則正しい生活を心がけて

コロナ禍の環境変化は大きなストレスですが、以前の生活に戻ろうとする動きも変化であり、まぎれもないストレス要因です。いきなり変化に対応しようとするのではなく、減速してゆっくりと方向転換していきましょう。例えば、満員電車で気分が悪くなるなら、朝早めに家を出て通勤ラッシュを避けた時差出勤をするなど、自分ができるだけ不快にならない方法を見つけてみましょう。

新たな生活様式の中でも、規則正しい生活習慣を心がけることは大切です。免疫力を高めるためにも、生活リズムを整えましょう。また、運動は効果的なストレス解消法になります。部屋の掃除や散歩、簡単なストレッチなどのエクササイズを生活に取り入れてみましょう。

さらに、音楽を聴いたり、おいしいものを食べたり、お気に入りの動画チャンネルを見るなど、自分が好きで楽しいと感じることをする時間を1日のスケジュールに組み入れることも、心の健康にとってよい栄養になります。不安以外のことに意識を向けることが大切です。

未曽有の危機の経験を、生き方・働き方を見直すチャンスと捉える

働き方が大きく変化した昨今、多くの人が手探りの状態で毎日を過ごされていることと思います。この未曽有の危機の経験を踏まえて、自分自身がどう生きていくか、どう働いていくかを見直すチャンスと捉えるのも、アフターコロナを生き抜く一つの道筋ではないでしょうか。

それでも、心が晴れない、やる気が出ない、寝つきが悪い、食欲がない、などの症状が2~3週間続くようであれば、早めに精神科・心療内科などの専門医を受診することをおすすめします。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。