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「新入社員です。連休明けから憂うつな気持ちになり、会社に行くのがつらいです」

「新入社員です。連休明けから憂うつな気持ちになり、会社に行くのがつらいです」

Q.20代女性、新入社員です。仕事を覚えたり、職場での人間関係を築いたりと、目まぐるしく4月が過ぎました。連休明けから気分が落ち込み、会社に行くのがつらいです。

A.まずは、連休中に乱れてしまった生活リズムを整え、適度な運動と家族や友人との交流などで、上手に息抜きをしましょう。それでも不調が2週間以上続くようなら、専門医を受診しましょう。

五月病のほとんどは一過性によるもの。環境への慣れで通常は自然と改善

厳しい就職戦線を勝ち抜いて入社した相談者さん、お疲れ様です。新入社員研修などで慌ただしい4月を乗り切った後、5月に入り、大型連休が過ぎたころから仕事への意欲や関心を失い、無気力な状態に陥ってしまう――それが、一般的によく呼ばれる「五月病」です。

学生から社会人という環境の変化は、本人が考える以上に大きなストレスを伴います。人によっては、新しい生活や人間関係にうまく適応できなかったり、あるいは何とか適応しようと頑張りすぎたりしてしまいます。その結果、心身の疲労が徐々に蓄積していくのです。

最初のうちは気持ちが張り詰めているため気づきませんが、連休で一息つくことでたまっていた疲れがドッと出てきて、本人も不調を自覚することになります。入社前のイメージと現実のギャップから生じる職場への失望感や、就職という人生の大きな節目を突破したことによる燃えつきなども要因の1つです。

五月病は、気分が落ち込んで憂うつになり、気力ややる気がわかず、食欲がなくなったり、何をしても楽しめなくなったりするのが特徴です。こうした症状はほとんど一過性によるもので、通常であれば環境への慣れによって自然と改善します。しかし、「そのうち治る」と放置しておくと、症状が数週間以上も長引き、出社困難に陥るほど深刻化して、「適応障害」や「うつ病」など、本格的なメンタルヘルス不調を発症してしまうケースもあります。

生活リズムを整えることが大切。頑張りすぎずに上手に息抜きを

学生時代は、起床時間や登校時間がある程度自由に決められる環境ですが、会社員になると、毎朝決まった時間に起床し、満員電車に乗って通勤することで、ストレスが大きくなる場合があります。休日は睡眠をたっぷりとって疲労を回復させることが大切ですが、寝だめは逆効果です。朝は太陽の光を浴び、体内時計をリセットさせましょう。休日も平日と同じ時間に起床するなど、できるだけ生活リズムを崩さないようにしましょう。連休後に不調になる原因の多くは、休日中に生活パターンが乱れることにあります。

また、忙しいときは食事の栄養バランスが乱れがちになりますが、栄養がかたよると精神的な不調につながることがあります。主食・主菜・副菜をそろえるようにし、できるだけ多くの食材を取り入れて、バランスよく食事をとることが大切です。

五月病は、心身に大きなストレスがかかることで起こります。新入社員は気合が入る時期ですが、頑張りすぎないように気をつけながら、適度な運動と家族や友人との交流などで、上手に息抜きをしましょう。

仕事とプライベートの切り替えをうまく習得することは、これからの長い社会人生活を送るうえで非常に重要です。五月病の兆候を感じたら、計画的に有給休暇を取得するなど、リフレッシュすることも考えましょう。それでも不調が2週間以上続くようなら、精神科や心療内科など、専門医に相談することをおすすめします。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。