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「残業続きで、心身ともに疲れています」

「残業続きで、心身ともに疲れています」

Q.40代男性です。ここ最近、ずっと残業が続いています。通常業務に加え、管理職としてやらなければいけないことが多々あり、23時に退社することもざらです。正直、心も体も疲れ切っています。家族で食事をとることもできず、このままでいいのかと働き方に悩んでいます。

A.周りの期待に応えようと頑張りすぎていませんか? 仕事の量と内容を見直し、「やること」だけでなく「やらないこと」を見極めましょう。心と体、家族との時間など、人生における優先事項を見直し、あなた自身の「働き方の意識改革」をしてみましょう。

長時間労働が続いたら、自分の心と体の声に耳を傾けて

毎日残業となると体がなかなか休まらず、精神的にも疲れてしまいますよね。相談者さんのお体が心配です。

日本では長時間労働が常態化しており、時間外勤務の長さや有給休暇消化率の低さが問題とされてきました。昨今推し進められている「働き方改革」では、こうした実態を改善するため「時間外労働の上限規制」「月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引上げ」「フレックスタイム制の拡充」といった施策が取り入れられています。

「過労死」の問題もあります。相談者さんは「過労死など自分とは関係ない」と思っているかもしれません。しかし、過労死問題でチェックしたいのが「労働量(残業時間)」です。残業時間は、必ずしも過労死に直接つながるものとは言い切れませんが、大きな影響があることは事実です。少なくとも、長時間労働が続いたら心と体の声に耳を傾けてください。もし不調のサインを感じたら、真摯に受け止めて、状況を改善するために上司や同僚に相談しましょう。それでも体調が改善しない場合には、心療内科や精神科などの専門医を受診することをおすすめします。

「やらないこと」を見極めて決断することも大切

相談者さんが、管理職として担う責任や役割は甚大なものでしょう。周りの期待に応えようと、自分自身に過大な負荷をかけていないでしょうか。仕事の量と内容を見直すことだけでなく、自分の中の割り切りも、ときに必要です。「やること」にいつも焦点を当てがちですが、「やらないこと」を見極めて決断するのも時間を生み出すうえで大切です。

相談者さんはどんな働き方をして、どんなプライベートを過ごせたら幸せでしょうか。今まで、仕事のために犠牲にしていることもあったと思います。今一度、考えてみてほしいのは、働いて得られる対価以上に大切なもの、「心と体の健康」と「大切な人との人間関係」です。

「残業はしても1~2時間にとどめる」「ノー残業デーを週に2日つくる」など、自分の中での「働き方の意識改革」をしないと、現状は変わらないままになってしまいます。上司や周りの人にも宣言して、仕事と寝るだけの生活から卒業し、自分や家族との時間も大切にしてほしいと思います。決して不可能なことではないはずです。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。