「仕事にやりがいを感じられず、他に天職があるのではないかと考えてしまいます」
Q.30代女性です。希望どおりの会社に勤め、待遇などに不満はありませんが、仕事にやりがいを感じられず、個人としてのキャリアに不安を感じます。もっと自分に合った天職があるのではといった思いが、頭から離れません。
A.仕事にやりがいを失いかけているときは、まず自分が一体何を求めているか改めて考えてみることが大切です。キャリアへの不安は、自分と向き合う貴重な機会と前向きにとらえて、これからの働き方について考えてみましょう。
自分が何を求めているのか、改めて考えてみることが大切
相談者さんは、ひと通り仕事を経験し、責任ある仕事を任される機会も増え、部下の育成や管理業務などを担当する機会も増えていることでしょう。若手時代のように言われたことをこなすだけでなく、自分で考えて仕事をすることが求められ、仕事の質が変化する節目の時期なのかもしれません。ただ、今やっている仕事以外に、何かやりたいこと、情熱を注げることがあるのではないかと感じているのですね。ところが、やりたいことがはっきりとあるわけではないのでしょう。
今の立場やあり方に迷ったときは、自分が何を求めているのかを改めて考えてみることが大切です。自分の中で満たされていない欲求はなんなのでしょう。
こうした欲求を考えるときによく使われるのが、有名な心理学者マズローの「欲求5段階説」です。マズローは、人間の欲求を5つの階層に分け、ピラミッドのような層を成していると考えました。
マズローの欲求5段階説
第1欲求:生理的欲求
第2欲求:安全・安定性欲求
第3欲求:所属・愛情欲求
第4欲求:尊敬・承認欲求
第5欲求:自己実現欲求
これを、会社員に当てはめるとどうなるでしょうか。入社して職を得るのが第1欲求で、そのポジションを安定的に維持していきたいと考えるのが第2欲求、希望の部署やプロジェクトに所属したいと思うのが第3欲求に当たるでしょう。そして、その集団の中で自分の力を認めてほしい、評価してほしいというのが第4欲求です。そして、最後に自己実現を求める第5欲求が生まれるという仕組みです。
今の仕事や、職場でのあり方に不満があったり、自分でも何が不満かよくわからないけれど、モヤモヤを感じている場合は、まずこのマズローの欲求第5段階説に沿って、自分が今どこの段階にいるのかを考えてみるとよいでしょう。
天職とは求めるものではなく、求められるもの
誰しもが「もっと自分に合った職場や仕事――『天職』があるはずだ」というふうに考えたことはあると思います。多くの人が「天職」という言葉を口にするとき、自分の能力が発揮でき、自分のやりたい仕事ができるのが天職だと、期待と希望に満ちあふれたイメージを持っています。では、相談者さんが発揮できる能力はどのようなもので、どういう仕事を、どんな環境であればできるのでしょうか。このような問いを受けて、明確に答えられる人は多くありません。
「天職」は英語で、“calling”といいます。天職とは、自ら追い求めて見出すものというよりは、天から「呼ばれる」もの。言い換えれば、天職はどこかに存在するものではなく、自分がやりたいことを理解し、与えられた環境の中で、どのようにして自分の能力を発揮していくのかを考える過程で見つかるのではないでしょうか。
やりたい仕事が具体的に見つかっていないのならば、一度立ち止まって、今の仕事に集中して取り組んでみてください。組織の中で働く以上、与えられたミッションをきっちりこなしていき、それによってやりがいを見出していきましょう。その経験を通じて、本当にやりたいことに出合えるかもしれません。キャリアへの不安は、自分と向き合う貴重な機会と前向きにとらえて、これからの働き方について考えてみましょう。