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「マウントをとってくる同僚にうんざりしています」

「マウントをとってくる同僚にうんざりしています」

Q.20代女性です。職場に、何かというとマウントをとって張り合ってくる同僚がいて、うんざりしています。ストレスがたまるので彼女と話したくないのですが、職場でのつき合いも大切だと我慢しています。

A.「マウント」は劣等感や、劣等コンプレックスの裏返しを表しています。相手は、あなたに認めてほしいという気持ちがあるのかもしれません。仕事上のできる限りのつき合いにとどめ、気持ちを切り替えましょう。

劣等感は、健康な努力と成長のための刺激

「マウント」や「マウンティング」という言葉を最近よく聞くようになりました。一般的には、「人間関係で相手より自分のほうが格上だとアピールすること」「自分の優位性を自慢したり、相手を見下した言動をとること」を指しているようです。

自分が他人より劣っている、または優れているという感覚は、よく劣等感や優越感という言葉で表現されます。「アドラー心理学」で有名な精神科医アルフレッド・アドラーは、劣等感について「健康な努力と成長のための刺激」と、前向きなこととしてとらえています。また、人間は常に優越性を追求する生き物だとも述べています。

私たちは多かれ少なかれ、悔しい思いをしたり、他人と競い合ったりして、努力した経験があるのではないでしょうか。それらの努力が積み重なり、成長し、今の自分があるといえ、そのエネルギーがあるからこそ、今日のような高度な文化を築いてきたのでしょう。

しかし、自分の劣等コンプレックスに悩み、結果だけを追い求めたり、賞賛を得たりすること自体が目的となると、強がって自分が優れていることをひけらかすようになります。アドラー心理学では「劣等コンプレックス」の裏返しとして「優越コンプレックス」と呼んでいます。これが現代における「マウント」といってもよいでしょう。

「マウント」はあなたに認めてほしい気持ちの現れ

さて、アドラー心理学でもう1つ「人間の行動には目的がある」という考え方があります。相手がマウントをとってくる目的には、あなたに「認めてほしい」という気持ちがあるのかもしれません。なぜそのような態度や行動をしなければならないのか、そうさせているものは何か、少しだけ思いを巡らせてみませんか。

また、あなた自身も相手と比較することをやめましょう。こちらが知らず知らずのうちに比較し、それが言葉や態度に出ていると、相手もそれに乗ってきてしまうことがあります。ときには自分の態度を冷静に見つめ直すことも必要です。

苦手な人とは「仕事上のつき合い」だと割り切る

社会生活を営んでいると、「みんなと同じように仲よくしなければ」「みんなから認められたい」という気持ちになりがちです。ただし、苦手な人がいるのは当たり前ですし、周囲と完璧に合わせることはできません。あくまでも仕事上のつき合いとして、仲よくなることはすっぱりとあきらめ、割り切って接しましょう。仕事上の敬意を払いつつ、業務上の“報連相”を忘れなければ、それ以上のことは必要ありません。それでも、マウントが気になるようであれば、「人間関係をうまく築けない人だ」くらいに思うようにし、なるべく気持ちを切り替えましょう。

できる限りのつき合いはして、嫌な気持ちになったときは気に留めないようにする……。そうやって頑張るあなたの姿は周囲に伝わります。そのように理解してくれる人とのつき合いを大切にしましょう。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。