文字サイズ

「上司がなにかと意見をしてきて、ストレスがたまります」

「上司がなにかと意見をしてきて、ストレスがたまります」

Q.30代男性です。職場の上司が、私のやることなすこと、なにかと意見してきます。指導してくれるのはありがたいのですが、自分としてはいわれたとおりにやっているつもりで、どこが悪いのかわからないので納得がいかず、ストレスがたまります。

A.注意を受けた際には、感情的に反発せず、一度素直に受け止め、自分も相手も尊重するアサーティブなコミュニケーションを心がけましょう。DESC(デスク)法(後述)を身につけて、自分の意見を上手に伝えられると、コミュニケーションがより円滑になるでしょう。

注意を受けたら、感情的にならずに一度素直に受け止めてみる

注意を受けた相談者さんだけでなく、注意指導をする側の上司も、ストレスを感じていることでしょう。お互いに改善の余地があり、歩み寄る姿勢が必要です。

指導を受ける側の問題としては、「自分はうまくやっているから」と感情的になってしまい、注意を素直に受け止める姿勢が少し足りないのかもしれません。せっかく注意されても受け入れる素地がないと、自分がなぜ指導されたかを根本的に理解できず、また同じことを注意され続けることになります。それは注意する側にとっても、気分がよいはずはなく、職場内の雰囲気の悪化につながりかねません。

また、いわれたとおりにやっているからといって、それでよいのでしょうか。常に「これでよいのだろうか」、「よりよい方法はないか」と振り返る謙虚さをもつことも大切で、相談者さんにとって自己成長にもつながるはずです。

DESC法を身につけて、上手に自分の意見を伝えよう

心理学では「自分も相手も大切にした自己表現」のことを「アサーション(assertion)」または「アサーティブなコミュニケーション」といいます。自己表現のパターンは、主にアサーティブ、ノンアサーティブ、アグレッシブの3つに分けられます。

相手を大切にせず、自分の思いばかりを伝えようとすると、怒りを相手にぶつけるような「アグレッシブ」なコミュニケーションになり、対人トラブルの元になります。一方で、相手を大切にしているものの、自分の思いを抑えてしまっているのは「ノンアサーティブ」なコミュニケーションで、ストレスを招くことになります。

アサーティブになるには、まず「自分も相手も尊重する」という考え方をもつことです。アサーティブな会話は、自分も相手も尊重する立場をとるために、自分の感情を相手に伝える際に、相手への配慮も必要になります。自分の意見をきちんと伝えるためのテクニックとして「DESC法」というものがあります。

DESC法の基本は、①描写(客観的事実を述べる)、②表現(相手に配慮しつつ主観的な気持ちを述べる)、③提案(具体的に提案する)、④結果(相手の「イエス」か「ノー」に対応する)、の4つのステップです。

たとえば、相談者さんが上司から注意を受けた際に次のように返答してみます。

「申し訳ありません。この仕事はまだ担当になったばかりで(D)、自分も不慣れで心配なのです(E)。どこを直せばよいのか、近いうちにお時間をとって教えていただけますか?(S)きちんと理解できれば自信をもって取り組めると思います(C)」というふうに、素直に詫びたあと、自分の置かれた状況(D)、感情(E)、次に自分はこうしたいという要求(S)を伝えます。そして最後に、そうすればこのような結果(C)になるだろうと示してはいかがでしょうか。

DESC法は、気持ちや考えを整理して伝えることができます。提案は受け入れられないこともあるので、対応は複数考えておくとよいでしょう。お互いに歩み寄ることができれば、相手も自分も満足できる結論にたどりつけるのではないでしょうか。

*DESC法:D(describe)客観的な事実を伝える、E(express)自分の感情を伝える、S(suggest)相手にどうしてほしいかを伝える、C(consequence)結果としてどうなるかを伝える、という4つを伝えるテクニック。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。