文字サイズ

「夫が突然うつ病に。妻の私はどうしたらよいですか」

「夫が突然うつ病に。妻の私はどうしたらよいですか」

Q.40代女性です。夫が突然うつ病になりました。気分が落ち込み、すべてのことに自信を失っているようです。夫がもとの元気な状態に戻るために、私はどうしたらよいのでしょうか。

A.相手の話をよく聞き、受けとめて、共感してあげましょう。たとえ特別なことができなくても、一緒の時間を共有するだけで大きな支えになります。ただし、共倒れにならないように、ご自身も1人の時間をつくったり、相談できる相手を見つけておくことが大切です。

病院に付き添い、医師の説明を受ける。時間と場所をできるだけ共有する

奥様として、ご主人のことが心配ですね。家族は病気の発見者であるとともに、治療の大事な支援者でもあります。家族の対応によっては、症状がよくも悪くもなります。

うつの症状で家族が苦しんでいる際の基本的な対処としては、時間と場所をできるだけ共有すること。治療のために病院に行くときは、付き添うことをおすすめします。病気のために考える力が低下している本人に代わって、家族が医師に症状を伝えることができますし、本人も安心して受診する気持ちになれます。治療にあたっては、本人ばかりでなく家族も病気や治療に関する正しい知識を持つことが、治療をスムーズに進めるうえで重要になります。

また、回復を焦らず、医師の指示に従って、根気よく治療に向き合うことが大切です。本人も気持ちが焦ると、「なまけていてはダメだ」と考えて、無理に動こうとしがちになります。しかし、心身が疲れているときにはゆっくり休んだり、楽しめそうなことをする時間も必要です。ご主人には思う存分リフレッシュするように伝えましょう。

本人のつらい、苦しい気持ちを受け止めて共感してあげる

うつ病の人に接する際に大切な姿勢は「傾聴、受容、共感」です。相手の話を聞き、受け入れて、思いに寄り添いましょう。

たとえば、眠れずにつらいと思っている人に対しては、「眠れないのは本当につらいよね。今は苦しいかもしれないけれど、治療できっとよくなるよ」と本人のつらい苦しい気持ちを受け止めて共感してあげることです。一番身近な家族が自分のつらさをわかってくれていると感じるだけでも、安心感はとても大きくなります。相手の言葉を繰り返したり、うなずいたりするだけでもよいでしょう。

たとえ特別なことができなくても、一緒に寝たり、ご飯を食べたりなど、生活を共にするだけでも、本人にとっては大きな支えになっています。気をつかいすぎず、いつもどおり普通に接しましょう。

自分が疲れてしまいそうなときは、専門医やカウンセラーに相談を

治療が長期にわたると、家族までもが心身共に疲れ果ててしまうことがあります。家族は何とかよくなってほしいと思い、元気づけようと一生懸命に声をかけますが、期待するような反応が得られず、それが長く続くと家族の心理的な負担が大きくなるのです。サポートすることをあきらめてしまったり、家族のほうが心のバランスを崩してしまうことが起こり得ます。治療中は反応が返ってくることを過度に期待せず、病気がよくなるまでゆっくり待つことも共倒れしないために大切です。

このような状態にならないためには、相談者さん自身がつらい気持ちを吐き出せる場所をつくったり、助けてもらえる相談先を見つけておきましょう。家族や友人、あるいはご主人の主治医に相談してみましょう。お近くの保健所や全国にある精神保健福祉センターでも、心の悩みや精神疾患に関するさまざまな相談ができます。

また、1人の時間をつくってカフェで休憩したり、部屋にこもって好きなドラマを見るといった小さなことでも、日ごろのストレスを軽減することができます。ときにはご主人と距離を置ける環境をつくることも必要です。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。