「スマートフォンが手放せず、仕事にも支障が生じています」
Q.40代男性です。空いた時間にスマートフォンで動画を見たり、ゲームをしたりするのが好きです。深夜もだらだらと続けてしまい、気がつけば明け方になっていることもあります。寝不足で勤務中にぼーっとしてしまうことが増えて困っています。
A.動画を見たり、ゲームをしたりするのをやめたいと思っても自制できず、日常生活や仕事に支障が出ている場合は依存症の可能性も。なるべく複数のストレス解消法をもつようにして、それでも抜け出せない場合は、メンタルの専門医を受診しましょう。
日常生活に支障が出ているのなら、依存症の可能性も
IT技術の発展や普及に伴って、インターネット、スマートフォン、タブレット端末などは、私たちの生活の必需品になっています。同時に、それらへの依存の問題も取りざたされるようになりました。
そんな中、国際的な疾病の分類として、インターネットやゲームについての障害や依存症を認定する動きがみられています。その診断基準項目を見ると、インターネットやゲームに関する行動をコントロールできない、それらが何よりも優先されて日常の活動や生活上の関心ごとに使う時間が減る、などの症状が継続することを示しています。
このことからわかるように、現代の精神疾患は、精神医学的な異常性・正常性だけでなく、その人の社会生活や家庭生活への影響といった視点が欠かせません。つまり、症状の有無だけではなく、その症状が日常生活に支障を引き起こしているか否かが重要な判断基準となるのです。
やめようと思ってもやめられない場合は、改善に向けた取り組みが必要
例えば、動画視聴やゲームが好きであれば、通勤途中の電車や食事中、入浴中にすることもあるでしょう。たまに深夜まで熱中し、翌日寝不足になることもあるかもしれません。ストレス解消法や趣味の1つだと考えれば、特に問題はないのです。
しかし、相談者さんの場合はどうでしょう。単なる寝不足ではなく、それが続いて勤務中にぼーっとしてしまうとなると、おそらく業務に差し障りが出てきているでしょう。業務上の些細なミスだけではなく、今後、重大な事故や損失につながる可能性すらあります。また、そのような支障があり、やめようという意識をもってもやめられないとなると、それはやはり問題です。依存症かどうかはこの相談だけではわかりませんが、少なからずその傾向はあるので、改善に向けた何らかの取り組みが必要です。
スマホを唯一のストレス解消法にせず、複数のストレス解消法をもって
改善のカギは「日常でできるストレス解消法をできるだけたくさんもち、実践すること」。スマートフォンがたくさんのストレス解消法のうちの1つではなく、「唯一のストレス解消法」になってしまっていると、なかなか抜け出せません。唯一のストレス解消法を禁じられてしまっては、それこそストレスがたまり、メンタルヘルス不調に陥ってしまいます。動画視聴やゲームをすぐにやめる必要はありませんが、それ以外に興味のもてるものを見つけましょう。
すぐにできそうなこととしては、軽いスポーツやストレッチを生活に取り入れる、昔やっていた趣味を再開する、などが挙げられます。いろいろなことに興味をもち、それを継続してみましょう。スマートフォンへの依存度が減るだけでなく、人とのつながりが広がったり、充実感が得られて生きがいが増したりするなど、効果は広がります。
ただし、自分の意志や周囲の説得ではやめられないのが依存症です。代表的な依存症に「アルコール依存症」があり、治療には「節酒」ではなく「断酒」が求められます。そしてそれが難しければ、入院などで管理することが必要となります。動画視聴やゲームでも同じように即「断スマホ」や入院が求められるわけではありませんが、生活に大きな支障が出ているなら、専門的な治療も視野に入れるべきです。どうしても抜け出せない場合は、前述のストレス解消法を実践しつつ、メンタルヘルスの専門医の受診も検討しましょう。