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「いつも怒ってばかりの自分が嫌になります」

「いつも怒ってばかりの自分が嫌になります」

Q.50代男性です。満員の通勤電車の迷惑なリュックサックやヘッドホンの音漏れなど、周りのマナーの悪さ、ルールや約束の時間を守らない人などに1日中イライラしています。本当は平穏にやり過ごしたいのに、イライラする気持ちに振り回される自分にも腹が立ってきます。

A.日常のちょっとしたイライラでも、発散できずにためてしまうと、些細なことでも怒りを感じる感覚過敏に陥ってしまいます。そういったとき、自分の呼吸に意識を集中させる「マインドフルネス」が、怒りの感情から自分を解放させる手助けになります。

怒りを発散できずにためてしまうと、感覚過敏に陥ってしまう

イライラや腹立たしさ、怒りといった感情は、誰もが抱く自然な感情です。しかし、相談者さんは怒りの感情に支配され、振り回されているようです。怒りを発散できずにためてしまうと、嫌な気持ちを抱えたまま生活することになります。ちょっとしたことで怒りが爆発して人間関係を壊したり、トラブルを招いたりといった二次被害も出かねません。

怒りが発散できずに、どんどん脳にたまっていくと、些細なことも気になってしまう感覚過敏に陥ってしまいます。さらに、その感覚過敏は「自分は絶対に正しい」という錯覚(万能感という)を脳に起こさせてしまいます。そのため相談者さんのように、「満員電車にリュックを背負ったまま乗るのは大迷惑。なぜそれがわからないんだ」とイラついてしまうのです。自分の常識が正しいと信じて疑わないから、たった5分といった遅刻でさえも怒りが沸いてきます。そして、この怒りの感情が誰にもわかってもらえないときにストレスがたまって万能感が肥大し、怒りが大きくなって止まらなくなってしまうのです。

マインドフルネスで、怒りの感情から自分を解放してあげよう

どうしたら、イライラや怒り、万能感に振り回されずにいられるのでしょうか。その助けとなるのが、人に頼らないで自分で怒りを打ち消す「マインドフルネス」という、心を整える方法です。やり方は「今、ここ」という瞬間を意識して自分の深い呼吸に集中してみます。頭の中で「吸って」とつぶやき、そして息を吐くときに「吐いて」とつぶやくことを繰り返します。そのときに「雑念を消す」とか「無になる」という必要はありません。“自分の呼吸に注目してあげる”というだけのことですが、「自分は悲しいんだな」とか「頑張っていて疲れているんだな」という気づきが、意識されない無意識下で行われています。それを繰り返すことで、自分で自分の気持ちをわかってあげられるようになり、人に頼らなくても、自分で自分の怒りの波長を打ち消すことができ、怒りから解放されていきます。

電車の中で不快な騒音に遭遇したら、静かに「吸って」「吐いて」を繰り返してみましょう。不思議と怒りが収まり、音漏れのシャカシャカ音や他人のおしゃべりも気にならなくなります。マインドフルネスは、寝る前に行うのもおすすめです。ぐっすりとよく眠れるようになり、翌日はスッキリと気持ちのよい朝を迎えられるでしょう。

山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 (医学博士 横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長
神奈川産業保健総合支援センター相談員 埼玉学園大学大学院客員教授)
1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。