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【はじめに】 自分を見つめ、できることから始めよう

健康的な日本食はうつ症状にも効く

心の不調は誰にでも起こり得るもの。まずは、自分自身を見つめなおし、心の声に耳を傾けてみましょう。さらに、心の不調の大きな原因である「ストレス」をためてしまわないために、自分に合ったメンタルヘルスケアのハウツーを身につけたいものです。

心の不調、心の病は誰にでも起こり得る

現代は、社会の仕組みが複雑になり、人々の価値観も多様化し、物事の変化もスピードが増して、ストレスのない生活を送ることは不可能といえるでしょう。厚生労働省の調査によると、今や働く人の約6割がストレスを感じていることがわかっています(2007年労働者健康状況調査)。

さらに、さまざまなストレスが大きな原因となって起こるうつ病は、国民病ともいわれるほど急増しています。年間3万人以上にも上る自殺者の多くがうつ状態にあったことも示唆されています。まさに、心の不調から起こる病は、他人事ではありません。誰しもに起こる可能性があるといえるのです。

すべての人にメンタルヘルス対策が重要

ストレスと関係の大きい病気はたくさんあります。例えば、うつ病は「心のかぜ」とよくいわれますが、これは、誰もがかかり得る病気ということを意味しています。強いストレスが長期間続くことは、うつ病の大きな要因になります。しかし、ストレスがたまっていたり、心の不調が始まっていたりという状況は、体の異常と比較して、気づきにくいものです。そのため、適切な手を打たずに放置しているとこじれてしまい、治りにくくなってしまいます。さらに、「自殺」のように、命をも奪うおそれがあることを知っておく必要があります。

私たち一人ひとりが、メンタルヘルスの重要性を理解して、日ごろから自分の心の声に耳を傾け、早め早めに対処することが、心の不調をこじらせないコツといえるでしょう。

周囲の人に助けを求めることも大切

自分ひとりで対処できないようなストレスに対しては、周囲の人に話を聞いてもらったり、周囲の人たちと力を合わせて、よりよい解決方法を探すことも大切でしょう。ストレスを発散するために、仕事や家庭以外に、趣味や生きがいとなるものをもつこともおすすめです。そして、窮地に陥ったとき、相談できる人をもつことが重要になってきます。

人間関係が大きなストレスになることもありますが、一方では周囲の人がストレスを癒す大きな存在にもなり得るのです。今や社会的な問題ともいえるメンタルヘルスについて、職場や家庭、社会全体で取り組む必要性も叫ばれています。

今の自分を変えることが未来につながる

ストレスは現代に生きる私たちにとって避けることができないものですが、ストレスにうまく対処していくことが自分自身を成長させることにもつながります。自分を変えることは、すぐに着手できます。まずは、自分自身のストレスに気づき、上手に対処するセルフケアを実践することから始めましょう。人生のスパイスともいえるストレスをコントロールする方法を身につけることが、心の不調を予防し、人生を豊かに送ることにもつながります。


山本 晴義 先生

監修者 山本 晴義 先生 1972年東北大学医学部卒業、1991年横浜労災病院心療内科部長、2001年より横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長。日本心療内科学会監事・専門医、日本産業ストレス学会理事、日本産業精神保健学会評議員、日本心身医学会評議員、日本職業災害医学会評議員。厚生労働省ポータルサイト「こころの耳」委員。著書は『ストレス一日決算主義』(NHK出版)、『初任者・職場管理者のためのメンタルヘルス対策の本』(労務行政)、『ビジネスマンの心の病気がわかる本』(講談社)、『ストレス教室』『働く人のメンタルヘルス教室』『メンタルサポート教室』(新興医学出版社)、『ドクター山本のメール相談事例集』(労働調査会)、『図解 やさしくわかる うつ病からの職場復帰』(ナツメ社)など多数。また、DVD『Dr.山本晴義の実戦!心療内科』(全2巻、ケアネット)、『元気な職場をつくるメンタルヘルス』(全12巻、アスパクリエイト)、CD『予防のための音楽「うつ」』(デラ)なども監修している。