サプリメントは、両刃の剣
サプリメントは手軽な健康食品です。副作用はないと思われがちですが、過剰な摂取は発がんリスクを高めることがあります。がん予防に有効なサプリメントとして、科学的に証明されたものはありません。健康維持のためであっても、適切な摂取が大切です。
野菜や果物の成分を手軽にとるために考案されたサプリメント
野菜や果物には抗酸化物質や、発がん物質を解毒する酵素を活性化する物質などが多く含まれていることから、がん予防効果が期待されています。また、野菜や果物に含まれるビタミン類やミネラル類、食物繊維、その他の成分は、体調を整え健康を維持するために、不足しないことをすすめられています。日本人のためのがん予防法としては、野菜・果物の合計で1日400g以上をすすめています。
しかし、国民栄養調査では、60歳代以上では合計400gに届いているものの、それ未満の年齢では不足しています。野菜や果物に含まれる成分を、手軽にとれるように考えられたのがサプリメントです。
ただし、サプリメントは野菜や果物などから特定の成分(種類は複数)を抽出しているため濃度が高く、食品でありながら、使用法を誤ると重篤な副作用が起こる可能性があります。
β-カロテンのがん予防効果は、過剰摂取だと逆効果
中国の胃がん多発地域で、β-カロテンの胃がん予防効果を検証する研究が行われました。その結果、β-カロテン15mgをサプリメントにより毎日とることにより、胃がんの発生率が21%も低下したという結果が得られました。
一方、欧米では喫煙者やアスベストに曝露した人たちを対象に、肺がんの予防効果を検証する研究が行われました。その結果、β-カロテン25mgや30mgを投与されたグループでは、肺がんの発生率が20~30%上がったという結果が出ました。
その後の研究で、β-カロテンの血中濃度と、さまざまながん罹患率の関係が明らかになったことから、中国の研究で、胃がんの発生率が低下したのは、被験者たちがもともと血中のβ-カロテン濃度が不足していたため、投与によって血中濃度が良好な状態に上がったと考えられます。これに対し欧米の研究では、被験者たちがもともと血中のβ-カロテン濃度が高いところに、さらに投与されたことにより過剰摂取となり、その結果、がんの発生率が上がったものと考えられます。
サプリメントを利用するときは、過剰摂取に気をつけて
β-カロテンやビタミンEの過剰摂取は、肺がんや前立腺がんなどの発生リスクを高めることが明らかになっています。水溶性であるビタミンCなどは、多量に摂取しても体内で使われずに余った分は尿に溶けて排泄されます。しかし、β-カロテンやビタミンEは脂溶性なので、余った分は体内にたまってしまいます。このような成分の濃度が高すぎると、逆に酸化的な作用になってしまったり、本来身体に備わっている抗酸化機能が抑制されたりするため、肺がんや前立腺がんなどの発生リスクを高めると考えられています。
現在のところ、がん予防に明らかに有効なサプリメントは確認されていません。がん予防のほか、健康維持のために使用する場合であっても、サプリメントは摂取量によって良くも悪くも働くことを認識し、利用する場合は過剰摂取にならないよう気をつけましょう。