肝臓がんの原因の約90%は、肝炎ウイルス
日本での肝臓がんの原因の多くはウイルス感染。そのほとんどは、C型肝炎ウイルス(HCV)やB型肝炎ウイルス(HBV)の持続感染から慢性肝炎を起こし、さらに肝硬変へと進み、肝臓がんが発生すると考えられています。
肝炎ウイルスの持続感染者は、肝臓がんのリスクが高い
日本での肝臓がんの原因の約90%は、ウイルス感染です。C型肝炎ウイルス(HCV)が原因となっている場合が全体の約70%、B型肝炎ウイルス(HBV)が原因となっている場合が全体の約20%です。
肝炎ウイルスには、A型、B型、C型、D型、E型があり、急性肝炎の多くはA型、B型、E型が、慢性肝炎の多くはB型、C型が原因となって起こります。
肝炎ウイルスに感染しても必ずしも肝がんになるとは限りません。C型やB型の肝炎ウイルスに何十年にもわたり持続感染し、その一部が慢性肝炎を起こし、さらに肝硬変へと進み、肝臓がんになると考えられています。
このことから、肝炎ウイルスの感染者は、肝臓がんにかかりやすいハイリスク者とされます。
無症候の持続感染者は、定期検査で早期発見に努めて
C型やB型の肝炎ウイルスは、主に血液感染です。輸血や血液製剤などの医療行為、針刺し事故や注射の回し打ちなどが感染ルートであり、B型ウイルス肝炎では、これらのほかに性行為や母子感染があります。
現在日本には、C型肝炎の持続感染者が150万人以上もいると推計されています。第2次世界大戦時に拡散した後、輸血や血液製剤などの医療行為などによって感染が広がったとみられています。
一方、B型肝炎の持続感染者は、100万人以上いると推定されています。母親がB型肝炎ウイルスに感染している場合、出産時に血液感染するリスクが高くなります。
輸血・血液製剤や母子感染などによるウイルス感染については、現在では感染防止対策が徹底されていることから、新しく感染する人はほとんどいません。しかし、感染防止策が実施される以前に感染し、無症状のままに持続感染者(キャリア)となっている人も多く、感染を知らずに過ごしている人もいますので、血液検査を受けて確かめることが大切です。
もし陽性であればさらに詳しい検査が必要ですし、ウイルス駆除や肝臓の炎症を抑える治療、あるいは肝臓がんの早期発見のために、肝臓の専門医を受診してください。
肝炎ウイルス以外にもリスク要因が。生活習慣にも気をつけて
ウイルス感染以外に、アルコール性肝疾患や、食生活(高エネルギー・高脂肪など)が原因で肝障害を起こす非アルコール性脂肪肝炎から、肝がんになる場合もまれながらあります。
また、たばこはほとんどのがんのリスクを高めることがわかっており、肝臓がんのリスク要因でもあります。肥満や糖尿病も肝臓がんのリスク要因とされています。
肝臓がんを防ぐには、
- 禁煙
- 節酒(飲み過ぎず、適度な飲酒)
- 食べすぎ防止(腹八分目)
- 適度な運動
などに心がけることといえます。
なお、国立がん研究センターの多目的コホート研究(数万人以上の特定集団を対象に、生活習慣などと疾病発生などとの関連性を長年にわたり追跡調査する研究)では、男女に関係なく、「コーヒーをほとんど飲まない人」と比べ、「ほぼ毎日飲む人」では肝臓がんの発生率が約半分に低下し、1日の摂取量が増えるほど発生率が低下すること、特に「1日5杯以上飲む人」では、肝臓がんの発生率は4分の1にまで低下したことが示されました。
同様の知見が世界中から報告されていますので、飲みすぎない程度に、コーヒーを飲むことが、肝がんの予防に有効である可能性があります。しかしながら、さらなる研究での裏付けが必要です。
●コーヒー摂取と肝がんの発生率との関係について