日本人の伝統的な食生活が胃がんのリスクを高める
日本人の主な食生活パターンは、米飯や味噌汁、塩蔵食品などを多くとる「伝統型」、野菜や果物などを多くとる「健康型」、肉類やパン、バターなどを多くとる「欧米型」の3つに分けられます。そのうち、「伝統型」では胃がんリスクが明らかに高くなっていました。原因と考えられる高塩分食品を減らし、野菜や果物を多くとることがすすめられます。
日本人の食生活のパターンは大きく3つに分けられる
食事とがんの関連を調べる研究では、単独の食品や栄養素についての発がん作用や発がん抑制作用を調査したものが多くなっています。しかし、実際に食事をとった場合、私たちの体内では複数の栄養素がさまざまに影響しあっていると考えられます。
そこで、日本の多目的コホート研究(JPHC研究)では、食生活パターンと生活習慣病との関連に着目し、食事が健康に及ぼす総合的な影響について検討しています。
研究では、平成2(1990)年に日本各地(分散された特定の地域)の40~59歳の男女約4万人を対象として行ったアンケートの中の、44品目の食事摂取頻度を問う調査結果から、日本人にみられる主要な食生活パターンを導き出しました。
最終的に、男女それぞれを次のような3タイプに分けることができました。
【日本人の主な食生活パターン】
- 伝統型:
塩蔵魚卵、漬物、魚の干物、味噌汁、米、魚介類などを多くとる。パン、バターなどはあまりとらない。男性ではアルコール(特に日本酒)も多くとっている。 - 健康型:
さまざまな種類の野菜、果物、海藻、じゃがいも、ヨーグルト、きのこ、大豆製品、牛乳、卵などを多くとる。 - 欧米型:
肉類(牛・豚・鶏肉、ベーコン、レバー)を多くとっているのが特徴的。また、パン、バター、チーズ、マヨネーズ、ドレッシング、インスタントラーメンなども多くとる。飲料では炭酸飲料、果汁、野菜ジュース、コーヒー、紅茶などが多い。
「伝統型」の食生活パターンの度合いが高いほど胃がんのリスクが上昇
10年間の追跡調査期間中に胃がんと診断された男性285人、女性115人を、3つの食生活パターンに当てはまる度合いによって、それぞれ「最も低い」第1グループから、「最も高い」第4グループまで4つのグループに分け、胃がんのリスクを比較しました。
胃がんの発生に関連するほかの要因(年齢や肥満度、遺伝的要因など)の影響を考慮したうえで、第1グループを「1」とした場合のほかの3グループのリスクを算出したところ、男女ともに「伝統型」の食生活パターンの度合いが高まるほど、胃がんのリスクがはっきりと高くなりました。男性では、「伝統型」の度合いが最も低い第1グループに比べ、第2グループで2.0倍、第3グループで2.5倍、第4グループでは、2.9倍にもなりました。女性では、同様に1.7倍、1.3倍、2.4倍となっていました。
また、女性では、「健康型」食生活の度合いが最も低い第1グループに比べ、ほかの3つのグループで胃がんのリスクが低くなっていました。一方、男性の「健康型」食生活では差が見られませんでした。
「欧米型」食生活では、男女ともに胃がんのリスクとの関連は見られませんでした。
高塩分食品の摂取を減らし、野菜や果物を増やす
「伝統型」食生活で胃がんのリスクが高くなったのは、塩辛や漬物、塩蔵魚卵、味噌汁といった高塩分食品を多くとっていることが原因と考えられます。
また、「健康型」食生活で女性の胃がんのリスクが低くなったのは、「健康型」の女性では野菜や果物を多くとっており、胃がんのリスクを下げるビタミンCとカロテノイド(緑黄色野菜に多く含まれるβ-カロテンなど)の摂取量が多くなっていたためと考えられます。逆に、男性では喫煙者の割合が高く、漬物と干物をやや多くとっていたことが影響し、胃がんのリスクが下がらなかったのかもしれません。
胃がんのリスクを下げるためには、これらの結果をふまえ、高塩分食品の摂取を控えて野菜や果物を多くとるように心がけるとよいでしょう。